Quantcast
Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』

$
0
0
トルーマン・カポーティについては、2009年にも映画があり、非常に良いできだった。そのとき、次のように書いた。
『カポーティ』2009年03月28日 | 映画前から見たいと思っていた映画。作家トルーマン・カポーティが主人公だが、彼が1959年末にカンザスで起きた農家の一家殺人事件に興味を持ち、詳細で膨大な取材をし、小説『冷血』を書くまでの話。面白い部分は沢山あるが、彼が殺人犯ペリー・スミスに興味と言うより、むしろ愛情を持ち、自分との共通性を見出して行くところが最高に興味深い。カポーティとペリーの関係はほとんど恋愛関係であり、それはポーティの同性愛によってさらに複雑になる。カポーティーがペリーに見出したのは、強い孤独と絶対的な絶望であり、それはアメリカ社会の最上層と最下層にあって、なぜか共通したのである。最初に現地取材を手伝う女性のミルが、日本で言えば香川京子そっくりの女優なのが好ましい。また、彼女は作家で、後に映画化された名作『アラバマ物語』の原作者であることも驚いた。小説に出ていたそうだが、全く忘れていた。カポーティーは、家庭的には不幸な子供時代を送ったが、生活は相当に裕福で、『冷血』の翻訳者龍口直太郎先生からは授業で、カポーティーの親が所有するアパートにテネシー・ウィリアムズが住んでいたと教わった。ともかくニューヨークのセレブの爛熟した生活と、地方ののんびりした自然が同居するアメリカという国の大きさ、不思議さを実感させられる優れた作品である。間違いなく近年見たアメリカ映画のベストである。
                           それは、これはその後のことである。『冷血』は、本当にすごい小説で、これに影響されて日本では、佐木隆三が『復讐するは我にあり』を書いた。これも、殺人犯の西口浩という男の不可思議さを描いた傑作で、今村昌平の映画も素晴らしかった。『冷血』の成功で、ニューヨークに戻ったカポーティは、社交界のスターとなり、多くのセレブと交遊する。パンフレットを見ても、ほとんど知らない人ばかりだが、女性はハリウッド女優並の美人で、男は上層のものばかり。ただ、これで初めて知ったのは、幼少期からカポーティは、ゲイだったことで、まるで三島由紀夫のような男だったのか。そして、アルコールと薬物の中毒になり、テレビでの醜態の映像もある。まるで、日本で言えば、横山やすしの酔ってテレビに出たときのようだ。そして、1984年8月に友人宅で死ぬ、60歳だった。彼は、このセレブとの交遊と彼らの痴態を書き留めていて、後に1986年に『叶えられた祈り』として出され、題材とされた人から多くの異論が出されるのも当然だった。いずれにしても、この2本の映画を見ると、アメリカの二つの側面、地方と都市の姿がよく分かると思う。それは、今大統領選挙で問題となっている民主党と共和党との差異のようにも見える
黄金町シネマベティ




Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

Trending Articles