1948年に大映で森一生が監督した時代劇、主演は片岡千恵蔵と山根寿子で、山根は東宝の女優だが、この頃東宝はストライキ中だったので、東宝が大映に彼女を貸したのだろう。
話は、江戸蔵前の札差松倉屋の娘の山根が大名家にお召しかえになり、名代の家老たちが迎えに来るが、山根の姿がない。
驚く兄・彦作の小堀明男や侍たちだが、祖父の小杉勇は、「よくやった」とニンマリとしている。
東海道を行く3人の鳥追い女がいて、それを小物が走り抜いて行き、茶店でことの顛末を杉狂児にるる述べている。
「どこかで見かけたら、役人なりに言ってください。300両を出します」と。
それを聞いていた知恵蔵は、「松倉屋には彦作という長男がいなかったか」
要は、片岡千恵蔵は、彦作と恋仲になるが、上手くいかず騙されて街道筋で悪事に手を染めているらしい妹を探しているのである。
最後、鞠子の宿で、千恵蔵は病の床に伏している妹・折原啓子に会うが、その夜に死んでしまう。
山根を追いかけて来た武士やヤクザ連中を蹴散らして、目出度しめでたし。米軍占領時代なので、刀による殺陣はなく、棒によるチャンバラなのが苦しいが。
街道を去っていく千恵蔵に対して、小杉は山根寿子に言う。
「ここで付いて行かなくてどうするのだ」
千恵蔵を追ってゆく山根のところでエンドマーク。
山根寿子は、日本的な美人で、時代が逆になるが吉永小百合によく似ている。
『細雪』 左端は高峰秀子、その右が山根寿子、さらに轟由起子、右端は花井蘭子
彼女は、東宝、新東宝のスターだったが、俳優ブローカーと言われた方と結婚されたので、次第に映画に出なくなったのは残念なことだった。
こののんびりした作風は、戦前の時代劇の中の「ちょんまげを付けた現代劇」と言われた、伊丹万作や山中貞雄の感じに近い。
戦後に亡くなったジャンルで、あえて言えば大映の市川雷蔵の時代劇喜劇が近いだろうか。
衛星劇場