1973年の神代辰巳監督作品。海辺の道を大江徹が自転車で、映画のフィルム缶をは運んでいる。途中で倒れて、フィルムがはじけて出て道路を走る。昔は、日本映画の封切時は、複数館で掛けもち上映をしていたので、フィルムを運んでやりくりしていた。昔、土曜日の午後、伊勢佐木町の映画館で『君よ、憤度の河を渡れ』を見るため、館に入ると客が「また、ここかよ」と怒っている。たぶん、次の缶が来ないので、前のをもう一度上映したのだと思うが、その後は普通に話は続いた。ここで、運んでいるのは、ピンク映画なので、掛けもち上映はおかしいのだが、まあいい。公楽館の主人は、高橋明で、奥さんは絵沢萌子であり、非常に色っぽい。大江は、町(千葉の大原らしい)の人間から「お前は加藤のケンだろう」と言われるが、初めての町であり、本人は違和感を持つ。この辺は、カフカ的である。そして、トラック運転手の男と正体不明の女中川梨絵のセックスを海岸で目撃することになり、ここから男二人と一人の女の関係になる。これは、ニューシネマの『明日に向かって撃て』的で、ここでも自転車に男女が二人で乗るシーンがある。神代の作り方は、いつも異化効果的で、ここでは御詠歌がかぶされている。3人は、くっついたり離れたりする。最後、大江は、金のために人を刺したといい、海べりでもう一人の男にナイフに刺され、大江と中川は、自転車ごと海に沈んでしまう。途中で、大江が強姦する女は、薊千露で、高校の演劇部の2年下の女である。中川梨絵は、数年前に亡くなったが、薊千露こと鈴木仁美君はどうしているのだろうか。
衛星劇場