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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『フローズン・ビーチ』

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開演前に隣の若い女性が聞いていた。

「ケラって日本人なの」

「日本人で、ケラリーノ・サンドロヴィッチという人だよ」

ケラの芝居は、劇団健康時代に『カラフルメリでオハヨ』を1991年に見ていて、そのひどさに呆れたことがあり、そのことは『ミュージック・マガジン』に書いた。

そのとき、ただ一つだけ救いと書いたのは、当時十代だったはずの女優秋山菜津子で、その頃から輝いていたのだ。

その後、どういう風の吹き回しか、ケラの演出した作品の評価が高くなり、私も数年前にシアター・コクーンで『二人の夫とわたしの事情』を見て、非常に面白かったので、そのことはきちんと『ミュージック・マガジン』で評価した。

また、このブログでも2010年4月に書いているので、お読みになっていただければとも思う。

今回の劇は、大して面白くもなく、なんだという感じだった。

この落差は、どこにあるのか。それは彼自身が作・演出した時はあまり面白くなく、『二人の夫とわたしの事情』のように(これはモームだった)誰か他人の脚本を演出した時には結構面白い結果になるということだろう。

今回は、ケラの作で、演出は若い方のようだが、そうなると元のケラの発想と言うか、その趣旨を大きく逸脱することは難しいだろう。

その意味では、今度の作品は、昔のようにケラの作・演出の良くないところが出ていたように思えた。

話は、カリブ海あたりの南国の島で、そこにいる金満家の日本人男の後妻など関係女性5人の話である。

一人二役などもあり、筋が混乱しているので非常にわかりにくく、笑いも面白さもなにもない。

1980年代、90年代、そして2000年代と時代が推移し、いろいろあるが、最後は特にどうということなく元に戻ってしまう。

要は時間の無駄である。

様々なギャグらしき趣向もあるが、唯一笑えたのは、美川憲一の『さそり座の女』がなぜかステレオから掛かるところのみ。

個々の女優について何かを言うべき気も起きないので、石田えり、松田美由紀、渡辺真起子、山口美也子の4人については、ご苦労様とだけ書いておこう。

この湘南文化センターの奇妙なデザインは、建築家長谷川逸子女史のもので、ここに来るのは開館時以来である。

ぴかぴかの宇宙的な外観が老朽化してうらぶれて、捨てられたような感じになっていたのは、なかなか感慨深かった。

その内、打ち捨てられたコンビナート施設のようになるに違いない。

このピカピカ施設とは対照的に、周囲の店が多数張付き、都市化しつつあるのは非常に良いことだと感じられた。

 


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