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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『憎いあンちくしょう』

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朝、録画をしているので、なにかと思うと『憎いあンちくしょう』なので、そのまま最後まで見る。
1962年の石原裕次郎、浅丘ルリ子の映画で、たぶんこれも蒲田パレス座で、『何かおもしろいことないか』『銀座の恋の物語』の、裕次郎・蔵原惟繕の「典子3部作」の一つとして見たと思う。
私としては、今までに見た古今東西の映画で一番好きな作品で、なんどみても文句のつけるところがないと思う。

                

話は、マスコミの兆児の北大作の裕次郎で、これは永六輔がモデルで、冒頭で浅丘ルリ子が聞く、
「今日は何の日」
裕次郎は答える、「昨日の続きさ」
これは、当時ラジオ関東でやっていた、永六輔、前田武彦、青島幸夫らの人気番組『昨日の続き』のことなのだ。
『昨日の続き』は、テーマのないその日の、出場者の気分に応じて話されるトーク番組の先駆けで、大変に人気のあったラジオ番組だった。
ここでは、「今日の3行広告から」という、新聞に出ていた3行広告を取り上げて、トークする構成になっている。
そこに、「ヒューマニズムを理解する運転手求む」という広告の芦川いずみが現れる。
彼女は、米軍払下げのジープを九州の村まで運んでほしいという。そこには医師で、恋人が働いているというのだ。
裕次郎は、毎日仕事が詰まっているのに、全部取り消して「自分が運んで行く」とテレビで断言する。
このところの裕次郎と芦川の対話も非常に良い。「愛は信じるものです」
芦川の最高作だと思うのだ。

裕次郎は、簡単な荷物をバックに詰めて東海道を西に向かう。川崎のスナックの親父は山田禅二、静岡の食堂の中には高品格らもいる。
その他雑誌記者で榎木兵衛、途中大阪での大群衆からジープに乗り込む記者で佐野浅夫と森塚敏など、新劇の役者も多数出ている。
ここに出ていなのは、小林旭、宍戸錠、二谷英明らだが、それぞれが封切り作品を持っていたからだ。
このたぶん、日本最初のロードムービーだが、これが特に大作でも芸術祭参加作品でもなく、通常の日活のプログラム・ピクチャーとして作られたのがすごいと思う。
当時の日活の高揚したパワーである。
音楽の黛敏郎が、菅原通斎と共に、裕次郎との対談番組に出るお遊びもある。

四国から九州に入った裕次郎とルリ子の二人は、博多で「博多山笠」の列に遭遇するが、この博多山笠が映像で紹介されたのは、日本で初めてだと思う。
最後、熊本の田舎でジープが着き、芦川と恋人の小池朝雄の対面映像を作りたいテレビ局の長門裕之が、芦川をヘリコプターで連れてきて会わせるが、二人は照れてぎこちない。すると裕次郎は、二人を対面させて、
「これから二人でやっていくんだ」と言う。
裕次郎とルリ子は、草原で抱き合ってエンド。

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