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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『大人と子供のあいの子だい』

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1961年の日活映画、東京の北部の貧困家庭の話、主人公の中学生は浜田光夫、父は松下達夫で、工員だが競輪と酒で身を持崩している。母親は、小夜福子で、祖母は武智豊。

                      

「大宮競輪に行く」と父親は言っているので、北区あたりだろうか。
浜田は成績が良いが、家が貧しいので、高校進学については迷っている。担任の教師は鈴木瑞穂。
姉の高田敏江は、結核になり療養所に入院すると、恋人だった梅野泰靖はすぐに高田を捨ててしまう。
父親の工場は、給料の遅配があったが、ついに行き詰まり閉鎖となり、松下は、工場主の斡旋で足立の工場に移ることになる。
工場主は鶴丸睦彦、工員には大滝秀治など、多くの劇団民芸の役者が出ている。出ていないのは、滝澤修くらいだろう。
浜田は、親友の両親で、裕福な家の宇野重吉と佐々木すみ江夫妻のところに住むことになる。
明治、大正時代には、貧困から進学できない優秀な生徒を親戚や地域の富豪などが援助したなどの例があるが、この戦後では珍しいだろう。
だが、浜田は、宇野と佐々木の家にいることには満足できず、ついに一人で生きてゆくことを決意して終わる。
浜田の同級生として松原智恵子が出ているが、彼女も貧困家庭で、中学卒業後、進学せず駅の売店の売子になる。
この若杉光夫監督の貧困家庭映画は、それほど大したものではないが、注目されるのは、この年に浦山桐郎の『キューポラのある街』が作られていることだ。言うまでもなく、これは東京の隣の川口の話で、浜田ではなく、少女吉永小百合の主演であることだ。
名作は、それ単独でできるものではなく、前作等の積み重ねの中でできるものであることが証明されたと思う。





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