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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『春高楼の花の宴』

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山本富士子、鶴田浩二共演の映画なので、大したことないと思っていたが、なかなか面白かった。
原作は、川口松太郎、脚本は衣笠貞之助と相良準こと楠田清である。
楠田は、映画史的には、黒澤明の『わが青春に悔いなし』の映画化の時、同じ題材のゾルゲ事件を扱っていると企画会議で問題になった『命ある限り』を監督した人であり、衣笠の弟子で、共産党員だったそうだ。
東宝を辞めた後は、衣笠の映画、演劇作品の脚本を書いている。

                    

音楽家芥川比呂志の共同住宅に、友人の鶴田浩二が来る。
彼らは、作曲家で、しかも邦楽を基にした音楽を作っている。
具体的には、伊福部昭や早坂文雄のことかと思うが、その辺は不明。
鶴田は、琴の宗家筑紫流・滝沢修の家で育てられたが、家元の座を狙っているとか、山本との間等の噂から家を出ていたのだ。
芥川から山本のことを聞いて、鶴田は、宗家に行くと床の間に山本の結納の品が並んでいる。
会のパトロンで金持ちの息子の上原謙との話がまとまったというのだ。
これは、美男美女だけの映画で、滝澤の女中で実は愛人ですら、丹阿弥谷津子だからすごい。
また、家付きの弟子で、実は鶴田が好きだが、山本との仲をつないでくれるのは、小野道子という具合。

お琴は、この時代までは、中流以上の家では未婚の女性が習うべき技芸で、女性のたしなみの一つだった。
音楽は、斎藤一郎だが、琴は宮城合奏団となっていて、総出演だろう。
そして、九州の別府市市政25周年記念公演に、山本らは招待され、フェリーで別府に行き、演奏すると大成功。
その夜、鶴田と山本は、すべての事業が終わった後、二人だけになる。
その場で、鶴田は「好きだ、昔から好きだった」と山本と結ばれる。
だが、翌日のフェリーでは、
「東京に戻ったら今までどおりにしましょう」の手紙が小野の手で渡される。

滝澤の還暦記念大公演が企画され、鶴田が書き上げた譜面を見てもらうため、芥川のところに来るが、その時、別府のことも言うと芥川は返す。
「君は、そのことを言う為に来たのか! その話はもう聞きたくないし、女性にために二度と口にするな!」
そして、明治記念館での上原と山本との結婚式になる。
無事、神前結婚は終わり、控室に山本が戻ってくると、鶴田がいる。山本は言う、
「どうして、どうして・・・」
鶴田は、山本を連れてタクシーで逃げる。

大スキャンダルになり、二人は、以前鶴田が下宿していたところに行き、さらに下町の貧しい部屋に移る。下宿のおばさんが、村田知永子で、これも非常に良い。
そこに小野が来て、二人のものを持ってきてくれる。
「世間の人は、悪口を言うでしょうが、負けないでください!」
下町の小屋のようなところに隠れている二人に、永田靖が来る。
「同業者です、この菅のことには感動しました」と言う。
永田は、俳優座で、彼も共産党員だったが、なぜか大映にはよく出ていて、雷蔵の『若親分』シリーズでは悪の常連だった。
興行に出てくれと言い、田舎の劇場に行くとなんとストリップとの合間の公演だった。
ここも、当時のストリップ公演の実態がわかる貴重な映像である。つまり、関西風の全スト以前の普通のストリップ興業の。
一応は立てられた金屏風の前で、二人は琴の合奏をする。
あまりのことに、鶴田は、永田らとケンカになり、火鉢の薬缶が倒れ鶴田は、手にやけどを負い入院する羽目になる。

最後、滝澤の還暦記念大公演が開かれ、山本は作曲者鶴田が指揮をすることを主張するが、会の理事・清水將雄が許さない。
大ホールでの公演、芥川が指揮をし、大々的に公演は成功する。場所は、イイノホールだろうか不明。
その会場の客席に鶴田が来ている。
公演の終了後、滝澤は言う「今日の曲を見て分かった、琴も伝統や格式にこだわっている時ではない、娘も伝統の鎖から放ってあげたい」
有楽町近くの道で、山本は鶴田を見つけ、一緒に車に乗って去る。

映画は、つくづく時代の産物だと思う。
1958年は、現上皇夫妻が結婚された時で、「好きな人と結ばれるが至上」とされたことがよくわかる。

日本映画専門チャンネル










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