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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『忠臣蔵』 1958年・大映版

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日本で映画化された事件で一番多いのは、「忠臣蔵」、赤穂事件だそうだ。理由は、47人と多数の人間が仇討を実行したからだろう。
ただ、「忠臣蔵」は、討ち入りの浪士の他、登場人物が多いので、大会社でないと映画化できず、東宝、松竹、大映は作っているが、新東宝と戦後の日活は作っていない。
もっとも、『明治天皇と日露大戦争』は、新東宝の「忠臣蔵」だったのかもしれない。




この1958年の大映版は、監督は渡辺邦男で、全体としては、講談などの挿話もすべて入れられている、網羅的な映画となっている。
大石内蔵助は、長谷川一夫、浅野内匠頭は市川雷蔵、その妻は山本富士子、吉良の息子で上杉家の当主は船越英二、赤垣源蔵は勝新太郎と大映のスターが配置されてい、る。
だが、他社の俳優も多く、その一番は吉良の滝澤修、蔵野家の妻・りくは淡島千景、京都島原の太夫に木暮三千代と適材の配役となっている。
意外なところでは、風呂屋で浪士の噂をするのは、大映の潮万太郎の他、坊屋三郎、志村喬である。
吉良屋敷の絵図面を家から持ち出して、岡野金右衛門の鶴田浩二に渡すのは若尾文子、父の棟梁は見明凡太郎。
また、討ち入りの武器を運んで本陣で、近衛家御用人を名乗るが、本物が来てしまって困る有名な場面では、中村鴈次郎が本当の垣見五郎兵衛を演じる。
場面で良いのは、長谷川の「色事」と「腹芸」で、島原で太夫相手に遊興にふけるところや、りくや母親の東山千枝子、さらに南部坂屋敷で遥泉院の山本富士子と戸田局の三益愛子らにも本心を見せないのは非常に上手いと思う。
要は、映画会社のスターの上下の秩序と同様に登場人物が配置されているのは、封建的と言えばそれまでだが、この1950年代までの日本の社会の秩序意識を反映したものだと思える。
1960年代の経済の高度成長以後、こうした秩序意識は崩壊するのである。
音楽斎藤一郎


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