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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『暗黒街の美女』

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1958年の鈴木清順監督作品、脚本は佐治乾で、音楽は山本直純。
舞台は、横浜で、当時の実景が出てくる。夜の街路のマンホールの蓋を開ける男がいて、水島道太郎。
下りると地下の下水道で、レンガの壁の一つを外すとダイヤと拳銃がある。
それを持って大きなキャバレーに行き、そこの店の社長の居場所を聞くと、トルコ風呂にいるという。
ニュートルコという店に行くと社長は芦田伸介で、トルコとはいっても、60年代以降の性的サービスの店ではなく、女性は半裸だが、サウナのような店で、本来のトルコ風呂のようだ。



水島は、裏町でおでんの屋台をやっている安倍徹のところに行く。
彼は、水島や芦田との仲間で、宝石の取引で安倍は片足を失い、水島は懲役3年を食らったのだ。
水島は、安倍に宝石を上げようと思っている。その屋台には、刑事の二谷英明も様子を見に来ている。
安倍には白木マリの妹がいて、マネキン人形のモデルなどをやっていて、その工場長は近藤宏である。
近藤は、非常に繊細で知的な男で、白木をデッサンする他、洋書をナイフで切って読んでいる。

山下ふ頭の鈴江倉庫の屋上で、外人らと宝石と金の取引が行われる。
ところが途中で、覆面をした他の連中が現れて、宝石を持っていた安倍は、追い詰められて宝石を飲み込み、屋上から飛び降りる。
安倍は、しばらくして病院で死んでしまうが、そこは横浜十全病院のようだ。だが私はこの時期の十全を知らないのでよく分からない。
病室には、芦田や子分の高品格らがいて、高品は「死体を焼けば宝石は残る」と喜ぶが、近藤は「ダイヤモンドは燃えるよ」と返す。
そして、芦田は棺桶を久保山の葬祭場に持っていって焼く。
宝石も燃えてしまったのかと高品らは落胆するが、実は近藤が病院の死体から、本のペーパーナイフで体を切って取出していたのだ。
この辺は、サディズムとブラックユーモアは佐治乾のセンスだと思う。
「よくやった!」とねぎらう芦田。
そして、水島は白木と一緒に、近藤の工場に行き、宝石を出させるが、その時芦田らも来たので、白木はマネキンの胸に練りこんで隠す。
それを水島は取戻し、ダイヤは水島のものになる。

だが、白木が芦田らに監禁され、ダイヤとの交換を言われるので、水島は、芦田のトルコ風呂に行く。
白木は、スチームで蒸されているのだ。
ここから水島・白木と芦田らのギャング連中とも銃撃戦になる。
水島は、店の貯炭場の石炭の山を崩し、道路への穴を開けて、白木を逃す、水島はあわやと言うところで、警察が来て皆御用となる。
再び、ひどい火傷を負った水島が病院のベッドに寝ていて、白木と二谷英明が見舞っているところでエンド。
『野獣の青春』や『殺しの烙印』の鈴木清順は、すでにできていたことが分かる。
麦田町の市電と車庫が出てくるのは、非常に貴重な映像だと思う。
白木マリが、ボーイッシュな女で面白い。





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