Quantcast
Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

『ゲッテイ家の身代金』

$
0
0
1973年7月、ローマで石油王ゲッテイ家の三世パウロが誘拐される。
冒頭のシーンが見事で、長い横移動でパウロが町を歩いているところが撮影されるが、その間にモノクロからカラーに代わってゆく。
画面に凝るリドリー・スコットらしい取り方である。リドリーと言えば『ブラック・レイン』や『ブレードランナー』と来るが、その前の『デェリスト』も見事で、これは作品のほとんどが二人の男が決闘していくシーンの連続だった。
すぐに母親に犯人たちから電話がかかってきて、1700万ドルの身代金を要求してくる。
義理の祖父のゲッテイに話すが、彼は「要求を認めたら14人の孫全員の身代金を払わなくればならなくなると」断る。
彼は、ケチで有名で、昔サンフランシスコに邸宅を持っていて、パーティを開くと客が勝手に電話するので、公衆電話を置いたと言うのだ。
父の代から石油事業を始めたのだが、この吝嗇と節税で、財産を作って来たのだ。
節税は実に面白いもので、彼の母も資産を保有することになるが、それを会社の株を交換したり売買したりして税金を逃れてきたのだ。
彼の息子の二世は、石油にも事業にも関心がなく、欧州の責任者だが、ローマにはいず、モロッコで女と麻薬に溺れている。
息子とローマにいるのは、元地方検事の娘のアビゲイルで、彼女とゲッテイの戦いが、映画の筋である。
最初身代金の支払いを拒否していたゲッテイは、突如同意する。
それは、父親に金を貸し付ける形にすれば、自分の所得から控除されると言うもので、この辺も笑わせる。
彼の趣味は、財産と骨董収集で、膨大なコレクションがあり、死後サンフランシスコ市に寄付しようとしたが、市は拒否する。
その理由は、ある美術の専門家に聞いたところでは、「コレクションの多くが偽物だったからだろう」とのこと。
金持ちが偽物を突かされるのはよくあることで、西武の堤康二郎にも膨大な美術品があり、一時は軽井沢に美術館を持っていた。
だが、父の死後堤清二氏が見ると、ほとんど偽物だったので、清二はそれらを隠し、美術館も閉鎖したそうだ。

犯人グループは南イタリアのマフィアで、彼らとゲッレイ家、そして警察とのやり取りになり、犯人は少年の耳を切って送ってくる。
最後、身代金と少年の取引になるが、田舎で解放された少年は、母親たちが来るのを待たずに勝手に町に出てしまう。
家々に助けを求めるが、人々はかかわりになるのを恐れてドアを閉めてしまう。
外国の金持ちへの反感だろう。
勿論、少年は無事助けられ、犯人たちも逮捕される。
その時、ゲッティ氏は一人で死ぬが、これは事実と違うようだ。
大変に面白い作品だっt。
ムービープラス

Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

Trending Articles