Quantcast
Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

『ヴォツェック』

$
0
0
METライブビューイングで『ヴォツェック』を見に東劇に行く。
ここは1960年代は映画館で、高校生の時に『ニュールンベルグ裁判』を見たことがある。
その前は、空襲で焼けた歌舞伎座の代わりに歌舞伎公演をやっていて、私と16歳上の長姉は、ここで戦後、六代目菊五郎の舞踊を見たことがあるそうだが、「声が小さくて参った」とのこと。

さて、ここは建て替えられて高層ビルになり、中には松竹系の多くの企業が入っている。
衛星劇場はともかくとして、新撮影所整備室と言うプレートが今もあるのには笑える。

                  

このアンバン・ベルグ作の12音オペラを見ると、ブレヒトの言うことも正しいかなと思えてくる。
これは、ゲオルグ・ビュユナーの詩的断片を基に構成されたもので、ドイツの下層の兵士ヴォツェックが主人公。
彼は、情婦マリーが上官と性交したことを知り激怒して、マリーを殺してしまう。
12音なので、メロディーに一貫性がなく、筋もよく理解できないので、私も何度か睡魔に襲われ、気が付くとマリーの情交の場面は終わっていた。
いずれにせよ、ヴォツェックのペーター・マッテイは、巨漢で迫力満点だが、そこにはヴォツェックの持つ不安や恐怖は感じられず、なぜ彼が殺人をするのか理解できないのである。

ブレヒトは、「オペラで瀕死の歌手が堂々と歌いあげるのは非合理だ」として「異化効果」的演出を唱えた。
私は、ブレヒトの戯曲とクルト・ワイルの音楽は面白いと思うが、この異化効果演出で上手く行ったものを見たことがない。
だが、このMETの演出は、もっと主人公の苦悩や不安をきちんと見えるように「異化効果」的にすべきだったと素人ながら思った次第。
帰りは、京浜蒲田で食事し、安ビデオ屋で、東映版の『青春の門』があったので買ってもどる。
浦山桐郎監督の東宝版は見たが、深作と中島の東映版は見ていないので買ったのだ。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

Trending Articles