戦後の熊谷久虎の監督なので、ひどいだろうと思っていたが、意外にも面白かった。
その面白さは、単純な娯楽映画としての面白さで、美しい母・原節子への小学生の息子・野口泰史の思慕を描く「母もの」である。
原作は林房雄で、ほぼ自伝的だとすると非常に興味深い。
映画は、原と息子が山道を歩いて、元女中だった清川玉枝の家に行くところから始まる。
原の夫佐分利信は、元は富豪だったが、財産を「金鉱探し」で使い尽くし、破産したのだ。
野口は田舎の小学校に行くことになり、原は繊維工場の女工になったので、「女工の息子」と苛められる。
その首領は、工場の息子だが、その姉の磯村みどりは、野口を可愛がってくれる。
この辺の関係も『次郎物語』によく似ている。
清川の夫は多々良純で、工場のカマタキとこれまた下層労働者で、この辺が元は左翼作家だった林房雄の原点なのだろうか。
良く知られているように林房雄は、1960年だ中ごろに急に転向し『大東亜戦争肯定論』を書き、文芸界を驚かせた。
佐分利は、要はお坊ちゃんで人の良さから騙されてしまい「詐欺師」とまで新聞に出るが、実は本当の詐欺師に騙されたことが分かる。
面白いのは、こんな田舎に「海賊団」という少年のグループがあり、正義の味方だと行動していることだ。
こんなものがあったのかと思うが、鈴木清順の名作『けんかえれじい』にも、川津祐介がリーダーの「OSMS団」というのが出てきたので、こういうものはあったのだろう。
最後、野口は小6生で中学を受験して合格する。危篤だった父も回復し再び幸福を得たとのことで終わる。
佐分利の無能、無策ぶりは、戦後の熊谷久虎のことのようで、ここは非常に興味深い。
熊谷は、また義理の妹の原節子と関係したとの噂もあり、その女性を美しく撮ると言うのはどういう精神かと思うが、原の主演映画しか熊谷は映画を作れなくなったいたのだから仕方ないのか。
さらに、原の兄のカメラマン会田吉男は、熊谷の監督作品『白魚』の撮影現場で、原の目の前で事故死したのだから、熊谷の精神はどうなっているのかと思う。
阿佐ヶ谷ラピュタ
その面白さは、単純な娯楽映画としての面白さで、美しい母・原節子への小学生の息子・野口泰史の思慕を描く「母もの」である。
原作は林房雄で、ほぼ自伝的だとすると非常に興味深い。
映画は、原と息子が山道を歩いて、元女中だった清川玉枝の家に行くところから始まる。
原の夫佐分利信は、元は富豪だったが、財産を「金鉱探し」で使い尽くし、破産したのだ。
野口は田舎の小学校に行くことになり、原は繊維工場の女工になったので、「女工の息子」と苛められる。
その首領は、工場の息子だが、その姉の磯村みどりは、野口を可愛がってくれる。
この辺の関係も『次郎物語』によく似ている。
清川の夫は多々良純で、工場のカマタキとこれまた下層労働者で、この辺が元は左翼作家だった林房雄の原点なのだろうか。
良く知られているように林房雄は、1960年だ中ごろに急に転向し『大東亜戦争肯定論』を書き、文芸界を驚かせた。
佐分利は、要はお坊ちゃんで人の良さから騙されてしまい「詐欺師」とまで新聞に出るが、実は本当の詐欺師に騙されたことが分かる。
面白いのは、こんな田舎に「海賊団」という少年のグループがあり、正義の味方だと行動していることだ。
こんなものがあったのかと思うが、鈴木清順の名作『けんかえれじい』にも、川津祐介がリーダーの「OSMS団」というのが出てきたので、こういうものはあったのだろう。
最後、野口は小6生で中学を受験して合格する。危篤だった父も回復し再び幸福を得たとのことで終わる。
佐分利の無能、無策ぶりは、戦後の熊谷久虎のことのようで、ここは非常に興味深い。
熊谷は、また義理の妹の原節子と関係したとの噂もあり、その女性を美しく撮ると言うのはどういう精神かと思うが、原の主演映画しか熊谷は映画を作れなくなったいたのだから仕方ないのか。
さらに、原の兄のカメラマン会田吉男は、熊谷の監督作品『白魚』の撮影現場で、原の目の前で事故死したのだから、熊谷の精神はどうなっているのかと思う。
阿佐ヶ谷ラピュタ