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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『家庭教師』

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1940年の松竹映画、監督は大庭秀雄、主演は水戸光子。
彼女は、フランス語の家庭教師として、三浦充子を教えに十津川家にやってくる。
家は、彼女と内気で詩を書く兄の徳大寺伸と母親で、父はいないのに、富豪なのは不思議だが。
戦後は、お色気伯母さんの三浦充子が、女学生を演じるのがおかしい。



水戸には、許婚の三原純がいて、彼は小学校の教師だが、大陸で移住者のために行こうとしている。
要は、満州移住だが、これは非常に問題のある事業で、国内の不況の解決策の一つとして大騒ぎされ、長野県で重点的に行われた。
だが、満州にはもともと住民がいたわけで、それを「強制的」に取り上げて移住させたもので、戦後の引き上げの悲劇の原因となる。
さらに、国内に戻ってきても土地はすでになく、第二の悲劇になる。

水戸光子の出現で、暗かった家が明るくなり、徳大寺は、彼女が好きになる。
結果としては、水戸と三原と徳大寺との三角関係になり、まじめで国策に沿おうとする三原をとるか、富豪の徳大寺を取るかの問題になる。
そして、水戸は、三原に付いて、大陸に行くことになる。
時代の変化、それまでのレッセ・フリーの自由主義経済から、統制経済下での、それまでの富豪たちの没落も描いているように見える。
この自由主義と統制主義経済との対立の象徴が、商工大臣小林一三と事務次官岸信介との対立で、近衛首相は、両成敗として両者を辞職させることになる。
岸信介の孫は、言うまでもなく安倍晋三首相で、彼の経済政策には経団連に賃上げを要求するなど、妙に統制経済的なところがあるが、祖父の影響だろうか。

小津安二郎の『戸田家の兄妹』と同じで、東宝とは異なり、戦争への時代に対しやや及び腰だった松竹としては、精一杯の時局協力だろう。
三原は、戦後は松竹を離れて、新東宝にいたようだ。
衛星劇場




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