「浪花ぶし この道一筋六十年」とタイトルされた日本浪曲協会会長澤孝子の、芸能生活60周年の記念公演があった。
まずは弟子の澤勇人のらくご浪曲『大山詣り』、澤雪絵の「忠臣蔵」外伝の『矢田五郎右衛門』、さらにやはりらくご浪曲の『千両みかん』
このらくご浪曲はいずれも作家大西信行の作、中入り前の澤順子の『素麺を煮る内蔵助』も、池波正太郎の原作を基にした大西作品。
そこで、おはなしで、大西信行がてきて、落語、浪曲、彼や小沢昭一の師匠の正岡容、さらに彼が文学座に書いた『牡丹燈籠』についてのこと。
この文学座等で上映されてきた『牡丹燈籠』は、俳優座が日生劇場で上演した『四谷怪談』のヒットを見ての杉村春子の要望だったとのこと。
やはり、新しい企画の成功は、次の冒険、企画を生むという例であろう。
澤孝子は、中入り後にやった大阪の天竜三郎の兄で、二代目廣澤春菊の弟子だったのだそうで、澤と天龍は、兄弟弟子となので、大阪から来たとのこと。
天龍は、なんと98歳だそうだが、非情に元気で、『伊達騒動』を語ったが、前説が最高に面白かった。
もちろん、戦争に行っており、輜重兵だったそうだが、あるとき支那派遣軍司令官だった畑俊六大将に「勝てますでしょうか」と聞くと
「まず平坦が持たないだろうな」と答えたそうだ。
武漢三鎮攻撃に従軍したが、彼はすぐに運良く司令部に戻されたそうで、それは皆が彼の浪花節を聞きたかったからだそうだ。
「芸は身を助ける」である。
最後は、富田常雄原作、大西信行作の『姿三四郎』を、もちろん澤孝子が唸ったが、さすがのド迫力。
富田の原作と黒澤明の映画が相当に違うことがよくわかったので、是非富田常雄の原作を読んでみることにする。
銀座線までの道中も大混雑で、地下鉄も上野駅付近が混雑していたが、なにかイベントがあったのだろうか。
ともかく暑い中だが、大変な人出だった。
木馬亭