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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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たまには外国映画 『眼には眼を』

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フィルムセンターのテクニカラー映画特集、1957年のアンドレ・カイヤット監督作品で、舞台はシリア。

            

 今、紛争で話題のシリアの地方都市トラブロスだそうだが、彼の友人が車でベイルートのコンサートに行くなどと言っているが、ドライブ旅行のことなのだろうか。

そこの病院の医師のユルゲンスが昼間の激務を終え一人で家に戻っていると、門衛のところにアラブ人の男フォルコ・ルッリが来て、「妻が腹痛で苦しんでいるので見て欲しい」と懇願する。

ベイルートのコンサートをラジオで聞いているユルゲンスは、診療はここではできないと言い、病院に行けば代わりの医師(実は不慣れなインターンだが)がいると言わせる。

翌日、車で病院に行くと、途中で昨夜のアラブ人のジープが留まっている。

当直のアラブ人のインターンに聞くと、昨日アラブ人が妻を連れて来て、腹痛だったので、盲腸だと思い、特に処置をしなかった。

夜中に苦しみだし、診察すると子宮外妊娠で、急死してしまったとのこと。

そこから、その妻の夫のアラブ人ルッリのユルゲンスへの「復讐」が始まる。

これが非常に執拗で、これでもかと続くのである。

妻を失い、男は印刷屋をやめ、セールスマンになり、各地で商売している。

そして、ユルゲンスがある地方の診療に行った帰り、予定のバスを逃してしまう。

そこにルッリが現れ、急ぐためユルゲンスは、彼と共に砂漠地帯を歩くことになる。

途中でユルゲンスは、この行程は、ルッリが掛けた罠であることに気づき、渇きに苦しむ。

いつには「こんなに苦しいのなら、むしろ死んでしまいたい」と言うと、

「私も妻が死んだとき、そう思ったが、やっと気づいたのか」と微笑む。

彼はほとんど無言で、数少ない台詞が胸に刺さる仕掛けになっている脚本がすごい。

砂漠の中に井戸があると言われて行ってみると空井戸で、

「井戸があると言ったが、水があるとは言っていない」と言う。

この復讐の執拗さ、われわれ日本人にはできないものであろう。

現地のアラブ人と欧州の旧宗主国の人間との確執の大きさ、根深さをいやでも思い知らされる作品である。

シリアの荒涼たる砂漠、山岳地帯の景色の激しい様相がすごい。

戦後の映画史に残る名作の一つであることは間違いない。

 


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