中山千夏の本のなかで、彼女の母親がいつも八千草薫について言っていた言葉で、さすがの千夏も「本当にきれいで可愛かった」と書いている。
東宝現代劇の『がめつい奴』で、中山が八千草と共演した1960年のことなので、すでに28になっていたはずだが、その美しさは本当だろう。
この映画はその3年前の1957年に谷口千吉監督、八千草と池部良の主演で作られている。話は中世の瀬戸内海の港・室の津を舞台とした、谷崎潤一郎の伝奇小説である。
全体の感じとしては、当時大ヒットしていた東映の『笛吹童子』『紅孔雀』と言った娯楽映画を極めて上品に格調高くしたというもので、なかなか面白い。
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高貴な家の姫の八千草と王子の池部が、悪漢赤松(小堀明男)によって家は滅ぼされ、八千草は遊女に、池部は人足に落ちぶれている。
それが不思議な筋書きで、見事に姫と王子に戻るという機種流離譚である。
小堀明男の手下の立派な顔の侍は、「山本麟一ににているが」と思うと、戦前のスターの杉山昌三九だったが、昔のスターは風格がある。
葉山葉子の名もタイトルにあったが、八千草の下の禿の一人だろう。
いずれにしても、この時すでに八千草薫によほど惚れていたのか、谷口千吉はきちんと撮っている。
シネマ・ヴェーラ渋谷