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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『赤線の灯は消えず』

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赤線問題の名作溝口健二の大映が、昭和33年3月の赤線廃止後の、女性たちの姿を描いた作品を作ったというのは、随分と皮肉なことである。
その翌年後の、おそらくは吉原の元の店に、京マチ子が実家から戻ってきたところから始まる。
若手の野添ひとみも、足を洗い堅気になろうとするがなかなかうまく行かない、彼女らの苦闘。



婦人相談所とその婦人更生寮から出て、京は、まず玩具工場で働く。
婦人更生寮は、都道府県が設置していたもので、私もある区役所にいたとき、その区にあった。
当時は、もう元売春婦ではなく、問題行動の女性の寮になっていた。生活保護を受けているので、区の福祉課にも来たが、ある女性は知的障害もあり、座っている椅子に尿を漏らしてしまうような女性だった。だが、驚くのはそうした女性を買う男もいることで、「これは日活ロマンポルノの神代辰巳の名作『赤い髪の女』みたいだな」と思ったものだ。

玩具工場で、京は作業が鈍く、下手とのことで倉庫番に廻されるが、工場主は彼女を襲おうとし、妻に見つかって首になる。
夏の海の砂浜での荷物預り所でも、財布を盗んでとの疑惑を掛けられてすぐに首。群衆の中にワンカット藤巻純が見えた。
屋台のおでん屋の女主人浪花千栄子は、親切な女で、屋台で使ってくれるが、浪花は交通事故で死んでしまう。
京マチ子をつけ狙うのは、チンピラの根上淳で、後には真面目な役柄の根上がチンピラというのは珍しいと思う。
野添ひとみは、田舎の幼馴染の船越英二が、上京してきて板前になり、恋仲になるが、野添の前歴を知り驚愕して去る。
京マチ子は、屋台のすし屋の親父潮万太郎にも襲われそうになるが、なんとか逃れる。
そして、ヤクザの杉田庚らの手で、元売春婦が偽情報で集められ沖縄に売られよとするが、摘発で逃れ、無事野添は船越と結ばれ、京マチ子も真面目な道に進むことが示唆されてエンド。
実に安直な解決だが、他になにがあったのか私も分からない。
脚本は、相良準こと楠田清で、黒澤明の『わが青春に悔いなし』のとき、共作で問題になった『命ある限り』の監督。元共産党員で、衣笠貞之助のブレーンだった。
監督は、なんでもなんでも撮る田中重雄で、音楽が古関祐而で『だから言ったじゃないの』などの歌謡曲を使って効果を上げている。
衛星劇場

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