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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『高原のお嬢さん』

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この映画は、以前から見たいと思っていた作品の一つで、というのも学生劇団の先輩の一人が、宴会になると必ず歌う曲だったからである。

舟木一夫の曲にしては、リズムがあり、ブラスセクションも軽快で、私も好きな曲だった。

舞台は、蓼科高原で、舟木はそこで義父の遺志を継いで牧場で牧草の研究をしている。

ある朝、牧場の仲間の堺正章と一緒にいると、きれいなお嬢さんの和泉雅子に会い、ひと目で恋してしまう。

その高原に開発を目指す社長の嵯峨善兵衛と息子の山内賢が来て、開発騒動が起きてアクションになれば「小林旭映画」だが、そうはならない。

なんと舟木と山内は、小学校の同級生で、その後舟木が義父の養子になり蓼科に引っ越したので、別々になったのである。

さらに驚くのは、和泉雅子は山内の知り合いで、その両親同士は許嫁としていることで、和泉は避暑に来たのである。

、和泉は積極的に動くが、舟木は受身で、大学の恩師へ研究の成果を報告するため上京した時も、和泉には行かず、山内の家に泊まる。

旧交を温めた後、山内は、「自分は本当に和泉雅子が好きになった」と舟木に告白する。

「これは夏目漱石の『こころ』だな」と思う。

『こころ』は、日活でも森雅之、三橋達也、新珠三千代、市川崑監督で映画化されているが、二人が同時に新珠を恋してしまい、森は三橋を出し抜いて新瑞と結婚し、三橋は自殺してしまう。その罪悪感にずっと森雅之は悩まされていて、最後は江ノ島の海で自死してしまうというものである。

だが、ここでは舟木は、山内を出し抜かず、彼に和泉雅子を譲り、和泉とは夜の新宿駅で別れる。

蓼科高原で労働する舟木だが、義妹の西尾三枝子が、「大変よ、ガラス・ケースの牧草が全部枯れてしまった」と言う。

「また、やり直せばいいさ」と舟木は明るく言って終わる。

この西尾三枝子は、実は舟木に惚れていることが途中で示唆されていて、二人はいずれ一緒になることが暗示されている最後のように見えた。

 

 舟木によれば、「この映画は彼の中ではターニングポイントになったもので、『絶唱』のような作品に移行するきっかけになった」そうだ。

たしかに、『こころ』のように、友人を出し抜いて戦後社会をドライに生きるのが、太陽族映画以後の日活映画の生き方だが、舟木はそうではなく、真面目で誠実なのだ。

その意味では、彼の役柄は戦後的ではなく、戦前的なので、映画『絶唱』のような古い話、身分差別を背景にしたような物語がよく似合うのである。

この和泉雅子も、銀座の生まれだが、西欧的なお嬢さんという感じではなく、日本的な感じなので、映画『絶唱』はピッタリで、大ヒットしたのである。

CSでの舟木によれば、『高原のお嬢さん』は、この年の日活最大のヒットだったそうだ。

理由は、舟木、和泉の他、堺正章とスパイダーズら若者の人気によるものだろう。

裕次郎、旭らは、すでにおじさんになっていたのだから。

                

タイトルには中野美和子の名があったがわからなかった。

彼女は後に沢知美となり、テレビ、映画でかなり活躍したタレントだが、ここでは多分、パーティでモンキーダンスを踊る若者か、葉山良二がやっている施設の子の一人だろう。

チャンネルNECO


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