女性作家の轟夕起子の家に起こる様々な日常的な事件を描く、庶民映画。
夫は織田政男で、本当は詩人なのだが、サラリーマンで一家を支えている。轟は、流行作家で、家で小説を書くのだが、故郷の小豆島から親戚の娘左幸子がいきなり出て来て、混乱を起こす。
轟は、子を産めない体で、自分の子でない男女を引き取り育てている。
轟の姉の元夫の伊藤雄之助も傑作な男で、元は二枚目だったらしいが、戦争で頭をやられたのか、稼ぎが全くなく、妻の飯田兆子らに馬鹿にされている一文無しで、轟の家に来ては誰にでも小銭を借りる始末。
左は、実は妊娠していて、その無軌道ぶりには轟も呆れるが、人の良い、轟も織田も結局は左を許し、皆元気に生きていく。
その悲喜劇は、ほとんど落語的で、戦前から経済の高度成長時代までの庶民世界は、江戸時代とほとんど変わりのないものであったことがよくわかる。
頬の手術以前の宍戸錠が、これまた親戚の子で居候する大学生に扮していて笑える。
木村威夫の美術は、世田谷の梅が丘の丘陵を利用して本物の家を建てている。日活は本当に金があったのだなと思う。
国立映画アーカイブ