日曜日の午後は、台風で外に出られないので、映画『用心棒』を見る。
娯楽映画として圧倒的に面白い。だが、これは黒澤明映画ではなく、菊島隆三映画であることを再確認する。
全体を覆う暴力性は、黒澤の世界ではなく、菊島のものである。
また、三船敏郎の桑畑三十郎と東野英治郎のごんじいとの関係、男同士の友情だが、これは黒澤映画にはなく、映画『兵隊やくざ』の勝新太郎と田村高広にみられるように、脚本の菊島のものである。
2組のやくざの連中の表情のメークが異常に凄く、志村喬、河津清三郎、山茶花究、藤原釜足、沢村いき雄、渡辺篤史など、「どの役者なの」と思うほどだが、三船の他、仲代達矢だけは普通の顔にしている。
この映画のメークの異常さは、この町が異常な狂ったような町だということを表現していると思う。
この作品を見るとき、いつも思うのだが、志村喬のものにされている、司葉子・土屋嘉男夫妻の弱弱しさは異常で、三船は「こういう人間が嫌いだ!」と言っている。
だが、私には黒澤が愛するのは、実はこうした脆弱な人間で、むしろ黒澤自身も後に自殺未遂をするように、きわめて弱い人間なのだと思う。
これは1961年の製作だが、東宝の俳優陣も大変に充実している。黒澤は1962年に『椿三十郎』、1963年には『天国と地獄』を作る。そして、集大成だと言った1965年の『赤ひげ』は、これ非常に異常な世界で、私はこれを評価しない。
東宝ばかりではなく、新東宝以外の邦画5社は、1963年ごろがピークだったと思う。
だが、1964年に行われた東京オリンピックで、日本人は、ライブのスポーツ映像のドラマの面白さに目覚めてしまい、作り物のドラマである映画から離れてしまうのである。
日本映画専門チャンネル