日活の監督野村孝というと宍戸錠主演の『拳銃は俺のパスポート』が取り上げられる。
だが、石原裕次郎と浅丘ルリ子で『夜霧のブルース』、小林旭で『さぶ』、吉永小百合では『続キューポラのある町・未成年』など、スター級の作品にも良いものがある。
彼は、日活末期、ダイニチ時代も在籍していて、1970年6月の公開作品。
太平洋戦争末期、昭和19年のビルマのインパール戦線、敵に包囲された小林旭の野尻大尉らは、軍参謀町田の岡田英次から、「現地死守」の命令を受ける。
大隊長の木島一郎は死に、小林旭が代わって指揮を執るが、死者累々の全滅になる。
例によって軍事指導は、山本薩夫の『戦争と人間』と同じ木島一郎で、戦闘シーンは、なかなか迫力があり、やはり実際の戦場を経験した人の表現は違う。
だが、岡田英次の町田参謀は、早々と逃亡してしていた。
捕虜となった小林が、故郷に戻ると、自分は上官の命令に反し、逃亡の上銃殺されていたことを知り、恋人の水野久美もいなくなっている。
東京の闇市で、小林は戦友の田村高広と再会し、田村がやっている闇市のマーケットで働くことになる。
そこには、青木義朗のヤクザ倉畑組が手を伸ばしていて、いざこざが起きるのは、『仁義なき戦い』に似ているが、この作品の方が早い。
戦後、公職追放になった町田の岡田英次は、いずれ来る追放解除を見越して、密かに事業をしていて、青木は彼の子分で、闇市の上がりも物にしようとしている。
そこで、岡田の指示で、田村に
「小林旭を闇市から追出せば、悪いようにはしない」と騙されて、小林を罠にかけ、米軍に逮捕された小林は、沖縄に重労働送りになる。
3年後、戻って来た小林は、田村を探し出し、真実を聞き、彼を許す。
この二人、さらに田村をバックアップするソニーを思わせる元町工場から精密機械の大企業社長になった中村竹弥とのシーンは非常に良い。
小林旭というと、名作がないので、石原裕次郎に比べてバカにされる役者だが、演技は非常に上手で、また哀愁の表現がとても良い。
日本ではまったく評価されていないが、香港での評価は高く、映画『男たちの挽歌』などは、明らかに小林旭のムードアクションの頂きである。
第一、登場人物のルックス自体がそっくりで、著作権法違反ではないが、「著顔権違反」とでも言うべきだろうか。
最後は、勿論小林旭は、岡田英次の復帰パーティーの会場に現れて、岡田を壇上で刺す。
場所は、今はない赤坂プリンスホテルの野外庭園である。
久しぶりに娯楽映画の王道作品を堪能した。
チャンネルNECO