パピヨンとは、フランス語で蝶のことで、胸に蝶の刺青を持つスティーブ・マックイーンが演じる。彼は女衒を殺した罪で7年の刑を受け、フランス本土から遠く離れた南米の仏領ギアナの島に流される。
その船には、偽札作り等の知能犯のダステイン・ホフマンもいる。彼は、自分の金で何とか工作して刑務所を出ようとしている。対してスティーブ・マックイーンは、自分の力で脱獄することを考えている。
島はひどいところで、監獄も非人間的だが、ワニのいる沼での過酷な労働作業をさせるなど信じがたい状態。いったいいつのことかと思うと、1930年代のことなのだ。ほとんどいじめのような映画で、マックイーンは、独房に入れられ、半年間光も奪われるなどされる。
そこでは知恵と金でどうにでもなる場所でもある。それはフランスも日本も大して変わらず、日本の方がまだ人間的な感じがする。
いつの間にか、ダステイン・ホフマンは、看守の手伝いのような者になっていて、スティーブ・マックイーンは、体が弱ったので、看護棟に入れられ、ついにそこの男2人と島を脱獄する。
その方法が、興味深く、インド人の医師などの助力で島からボートで出て、別のインディオの島に行き、スティーブ・マックイーンはそこで暫しの安楽の時を得る。インディオは、ほとんど裸体で、女性も乳房は丸出しなど、やや差別的表現が見える。また、島を伝う過程で、ハンセン病の島が出てきて、住民の顔が像皮病のような異常な皮膚になっているのは、いくら何でもひどい表現だと思うが。
そして、最後の島に流されるが、なんとそこにはダステイン・ホフマンがいて、豚を飼うなどしている。彼はもう脱獄はあきらめて自給自足生活に自足している。だが、スティーブ・マックイーンは、ヤシの実を藁袋に詰め、それで島を抜けることに成功する。
この島でのダステイン・ホフマンの自給自足生活や、スティーブ・マックイーンのインディオの島での生活などを見ると、自然賛美、自然への憧れが感じられるが、その裏には1970年代以降の、西欧文化への疑問や環境問題への意識もあるように思えた。
実は、原作ではダステイン・ホフマンの姿は薄く、全体に映画とは異なるようだが、そこは脚本のダルトン・トランボの意思が反映されていると思う。