藤田進と言えば、姿三四郎で、これと加藤隼戦闘隊の加藤大尉などの軍人役だけで映画史を生きた役者も珍しい。
他に印象に残る役と言えば、黒澤明の『隠し砦の三悪人』の、悪役から善人側に寝返る武士くらいだろう。
1949年の大映作品なので、ここでは姿三四郎に面影が似ている大学生の宇津木となっていて、大学選手権で小坂の伊沢一郎と対戦し、山嵐で勝つ。
その直後に召集令状が来て軍隊に行き、戦後4年目の廃墟のような東京に現れる。
宇津木が世話になっていたヤクザの親分見明凡太朗は、藤田の勝利の日に脳梗塞で倒れ、子分だった河津清三郎が縄張りを作って悪事を重ねていて、見明凡太郎の組を乗っ取ろうとしている。
河津は藤田を自分の組に入れようとするが、藤田は拒否して輪タクの運転手になる。
だが、そこにも河津の手が伸びてきて妨害されるので、最後藤田は河津らを撃退して、魚屋の娘の若杉須美子と一緒になることが示唆されて終わる。
この若杉須美子は、どこかで見た女優だと思ったら、後の新東宝の傑作『東海道四谷怪談』の若杉嘉津子だった。
監督は多様な作品の多い久松静児で、やはりうまい。
この人は、かなり訛りのひどい人で、撮影中も何を言っているのか、スタッフ、キャストはろくに分からず、それでも順調に撮影は進行したとのことで凄い言える。
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