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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『黒澤明が描こうとした山本五十六』 谷光太郎

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映画『トラ・トラ・トラ!』制作の真実 と副題されていて、ネットでの評価は、既存の本の引用ばかりとのことで低かったが、黒澤と山本には興味があるので買う。引用ばかりで、と言う評価はおかしい。既存の資料を使用することは当然のことで、ノン・フィクション・ノベルではない限り、新資料がないからと評価しないのは間違いである。

だが、この著者はきちんと黒澤明の映画を見ていない人であるように私は思う。その証拠に、黒澤が「自分の作品ではない」と言っている、自分勝手な言い分の問題作『明日を創る人びと』に一切言及していないことで明らかである。

もし、『明日を創る人びと』が、黒澤明が言うように、「組合に作らされた映画」なら、戦時中の『一番美しく』も、軍国主義という時代の風潮に作らされた映画である。第一、東宝の争議時代、黒澤は明らかに組合派であり、その趣旨の論文を『新日本文学』に書いているほどなのであり、組合の運動を黒澤は基本的に賛成だったのである。

 

           

ただ、この本で知った新たに確認したことは二つあった。

一つは、日本海軍のことで、南雲忠一のような優柔不断な将官が海軍攻撃隊の司令官になったのは、海軍の年功序列主義だったこと。要は完全な官僚主義だったのだ。

これに対して、米海軍首脳は、大統領ルーズベルトの好き嫌いで選ばれていて、それほど優秀ではなかったが勇猛果敢な連中だったこと。

そこで大統領の指示に忠実に従ったことが真珠湾の敗北になったが、ミッドウエィ以後の勝利になったこと。

日本とアメリカの軍隊の組織の違いがよく分かった。

平時は官僚主義でもよいが、戦時は臨機応変な特別の編成が必要なのだから。

 

 


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