今回の日活特集でぜひ見たかった作品。芦川いづみの最後の作品なのだから。
女性ファンが多いのが芦川いづみで、いつもは親爺ばかりのラピュタに伯母さんが多くて驚く。
話は、高知県の孤島沖の島に赴任して活動した保健婦荒木初子の活躍を描くもの。
主演は、芦川いづみではなく、テレビの朝ドラの『おはなはん』で大人気になった樫山文枝、ニセ医者で宇野重吉、フィラリアの調査で来る長崎大の教授で松下達夫、島の校長で嵯峨善兵など、ほとんど民芸映画。
他に、浦辺粂子、田中筆子、今井和子など良い脇役が出ているが、やはり製作の大塚和の人脈だろう。
監督は吉田憲二で、後にはATGでの『鴎よ、きらめく海を見たか・めぐり逢い』などのばかばかしい映画もあったが、これは悪くない。
樫山の活動は、ほとんど余計なお世話で、当初村人からは反発を受けるが、最後島からの離任が起きた時は、浦辺粂子以下のおばあによる離任反対運動にまでなる。
誠に立派な方だと思う、私のような適当な役人から見れば。
芦川いづみは、樫山の上司で、県の課長か係長クラスの保健婦担当の女性で、あまり出番は多くない。
実際に離島のような場所で撮影されたらしく、島の家屋は本物の古さである。
ただ、この作品で触れられていないのは、荒木がもともと島の出身だったということであるが、まあいい。
かつて日本映画には、良心的作品もあったという証拠の一つである。
ラピュタ阿佐ヶ谷