逝ける映画人特集、野村孝と深江章喜で、『夜霧のブルース』 元はディク・ミネのヒット曲で、以前にも映画化されている。
横浜の荷役会社野上荷役社長の山茶花究に殺害の電話予告が入る。部下はいつもの垂水吾郎や柳瀬志郎など。
そこでは、山茶花と対立する岡部企業の芦田伸介の会社も、港湾荷役作業で競っているが、労務者の取り合いから芦田の会社は苦境に追い込まれている。
労務者と会社の争いの中で殺人事件が起きる。
山茶花らが、芦田とのキャバレーでの決裂する交渉から戻ると、石原裕次郎がコートの下に拳銃を隠して入ってくる。
そして、妻となった浅丘ルリ子との神戸でのことを話す。
回想王・橋本忍の弟子国広威夫の脚本なので、裕次郎が神戸で浅丘ルリ子に会い、最後は結ばれたまでの件が述べられる。
そして、長崎出身の浅丘ルリ子が列車で故郷に戻ろうとした車内に裕次郎が現れ、「好きなんだ!」と言って抱擁する、ここまでに1時間掛かる。
今の作品のテンポからみれば少々鈍いが、1962年の当時ではこんなものだったのだと思う。
緻密な描写が得意の野村孝らしさ。
裕次郎は、孤児から拾われて育てられたやくざの組長の小池朝雄や子分の土方弘らにリンチされるが、裕次郎と浅丘ルリ子の二人は、横浜に出てくる。
荷役会社の芦田伸介のところで就職するが、山茶花の悪だくみで仕組まれた銃撃事件の弾に当たってルリ子は死んでしまう。
裕次郎は、山茶花を殺し、自分も彼の拳銃で死んでしまう。
『狂った果実』は、別として、石原裕次郎が明らかに死んでしまうのは、これが最初で、いわゆるムード・アクション映画の始まりでもあった。
神戸の浅丘ルリ子がオルガンを弾いている喫茶店「ロロ」は、最初に見た時「本当にあるのか」と思った程だが、もちろん木村威夫の美術作品である。
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