1954年の『ゴジラ』から1987年の『竹取物語』に至るまで、東宝の特撮映画の美術で活躍された井上泰幸氏の展示会が行われているので、海老名市まで行く。
なぜ、海老名で開催されたかといえば、井上氏は1971年に東宝を退社後、海老名市上今泉の自宅に会社を作って活躍されたからだという。
この展示会の情報は、私の海老名に住んでいる姉から聞いたもので、先週に行われたトークショーも行くつもりだったが、ネットで予約しようとしたが上手くできないうちに完売となってしまった。
姉が結婚して住んだ1970年代の海老名は、本当の田舎で、駅の周囲は全部田んぼだった。
久しぶりに行くと大変な賑わいで、駅周辺は高層ビルの乱立で、イオンや駅前にも映画館がある。
展示会は、さすがに井上氏の業績を反映して、東宝特撮映画の全盛時代の美術関係資料が大量に展示されている。
「映画の美術というのは、映画を最初に具体化させるものだ」というのは、同じ東宝の美術の中古智さんの言葉だが、特撮美術は、まさに作品を目に見せるものであり、特撮美術の役割は非常に大きいと言えるだろう。
そして、あたり前だが、スケッチやデザインが非常に上手い。それは当然で、井上氏は日大芸術学部美術科を出た方なのだ。同様に東宝、そして円谷プロで活躍され、ウルトラマンの顔尾を造形した成田亨氏も武蔵野美術大学彫刻科の卒業なのだ。
『ゴジラは円谷英二である』(えにし書房)でも書いたが、東宝にはその他、山下菊二、高野良作などの前衛美術家がいたのである。
井上氏の美術で最高なのは、『ゴジラ対ヘドラ』のヘドラだろう。こんな変な怪獣を考えるのは凄い想像力である。まさに前衛美術家の面目躍如である。
因みに、『ゴジラ対ヘドラ』は東宝の歴代特撮映画で、最低の興行成績だったようだ。私も数年前に見たが、出演者が山内明、麻里圭子、柴俊夫、木村利恵らと地味で、題材が公害なので、まったく意気の上がらない作品だった。
だが、監督の坂野義光氏は、今回の『シン・ゴジラ』にも関わっていたようで、ゴジラ映画への思いれは大きいようだ。