近年、善意とか良心的と言った言葉を冷笑する向きがあるが、かつて日本にはこういう人もいたのだと知る作品である。
白樺派の柳宗悦は、1916年に当時の朝鮮に行き、白磁の美しさに魅せられて、次第に朝鮮の文化に引き寄せられていく。
それを白樺派のお金持ちのお坊ちゃんの「お道楽」ということは簡単だが、やはり偉いことだと思う。
妻は声楽家の柳兼子で、クラシック賛美は気持ち悪いが、まあこの時代では仕方ないだろう。この人のSPはかなりあるが、稼ぎのない柳との生活を支えるために、レコードをたくさん出したようだ。
そして柳は、民芸運動をはじめ、朝鮮に朝鮮民族美術館を作る。この時代では大変に勇気のいることだったと思う。
主演の柳の役は、篠田三郎で、良心的な男を好演、現地の女性を演じる日色ともゑも上手い演技である。
劇団民芸の役者は、今時珍しい「お行儀の良い演技」で、貴重な存在と評価できる。
終了後は、地下鉄で浅草に行って、ひさご通りの店で飲んで帰る。
三越劇場