今日で朝の上映が終わるというので、朝早く横浜を出て渋谷に行く。夜は、帰りが異常に混むので嫌なのだ。
『レミニセンティア』は、日本最初のロシアで作られた劇映画で、監督の井上雅貴は、10年前にソクーロフの『太陽』でメイキング映像の作成をして、ロシアの素晴らしさに感動し、自己の第一回作品をロシアに選んだのだそうだ。
場所は、モスクワから250キロ離れたヴォルガ川沿いの都市ヤロスラブ、そこに作家で超能力者のミハイロフがいて、彼は人の記憶を消せるとのことでつらい記憶を持つ人々がやってくる。
共同経営の友人に裏切られた男、夫に愛人が分かって別れた妻、娘を自分の不注意で死なせたと思っている母親、夜車を運転している時、宇宙人の女にあったという男など。
タルコフスキーに『ストーカー』という名作があり、これも超能力と人間の幸、不幸を描いた作品だったが、そうした感じである。
ある日、逆に人の忘れた記憶を蘇えらせるという女マリアに会い、この後、ミハイロフには奇妙なことが起きる。いつも連れている娘のミラニーニャは、本当はいなくて、彼の幻想が作り出したものではとも思えてくる。
人の記憶の不思議さを大変うまく描いていて、またロシアの情景も良い。宇宙博物館のような建物が出てくるが、ここは世界初の女性宇宙飛行士テレシコワの生地で、彼女に因んだ博物館なのだそうだ。
彼女の有名な言葉、「私はかもめ、ヤー・チャイカ」である。
実は、この映画は去年行われた新人監督映画祭で、長編のグランプリを受賞したのだが、スケジュールの関係で私は見ることができなかったが、今日見て非常に良かった。
ともかくロシア人の役者が非常に良く、全員地元の劇団の役者らしいが非常に上手くて、また感じが出ている。
特に、宇宙人に会ったという、アメリカのジョン・カザールのようなきたない男が良い。
ユーロスペースのナイトショーは来週の金曜日まで、見て損はない作品である。
因みに題名のレミニセンティアとは英語のレミニセンスで、追憶と言った意味だそうだ。