非常に面白い映画だった。
主人公は、韓国から北に亡命したと言われていたが、実は拉致されて北朝鮮に行き、元夫で映画監督申相玉に再会した女優の崔銀姫。
彼女は韓国の大スターで、申相玉も大監督で当初はオシドリ夫婦だったが、申に愛人がいることが分かって二人は離婚する。
そして、申監督がいなくなり、さらに崔も1978年に行方不明になり、二人は亡命して北にいるとされ、その後二人は3年間に17本の映画を作る。
その1本が、北朝鮮の『ゴジラ』、『プルガサリ』で、1998年に私も見た。
日本から東宝の中野昭慶や薩摩剣八郎らが招かれて行き、特撮映画を指導した。
当時の指導者、金正日は、映画が大好きで、「北朝鮮の映画は泣いてばかりでつまらない」とのことで、韓国の申が狙われたのだそうだが、結構高い鑑賞眼を持っていたわけだ。
彼は、父親の金日成と違い芸術家タイプで、人前で話すのも下手で嫌いだったそうだ。
映画は、崔のインタビューで展開されるが、ともかく北の国の異常さが凄く、笑うしかない。
北では、首領の死に際しては、号泣しないと逮捕されるそうで、金日成や金正日の葬式で号泣する人の表情が凄い。まるで、古代の日本で、大王の死で、殉死の習慣があったと言われているみたいだ。
申相玉の北朝鮮での映画も一部紹介されるが、結構ダイナミックなアクション映画を撮る監督だったようだ。『プルガサリ』も、その一環で、結構面白い作品だった記憶がある。
最後、二人はウィーンで監視員の目を盗んで逃げ、アメリカ大使館に亡命し、米国に住む。申相玉はハリウッドで作品を撮ったが、そう成功ではなかったようで、北の時に結構いい作品を残しているのは皮肉である。
崔は、韓国に戻るが、かつても名声はもう得られなかったようだ。