1966年、『男の顔は履歴書』に続き、加藤泰が松竹で撮った2作目で、主演はやはり安藤昇。
昭和18年の北支というタイトルが出て、上官の佐々木孝丸に逆らった安藤が、前線の刑務所というか獄に入れられる。
そこは中国人に売る阿片の材料のケシを栽培している台地で、その獄にはいろんなはぐれ者がいる。
松竹版の『兵隊やくざ』ともいえるが、作品としては日活の『黒雲零戦一家』に近い構成だが、安藤には勝新太郎や石原裕次郎のような底抜けの明るさはないので、映像はあまり弾けない。
この乱暴者たちは、高宮啓二、南原宏冶、左朴全、諸角啓二郎、砂塚秀夫らで、個性的なのだが、上手く描き分けられていないので、あまり盛り上がらない。
ともかく雑な感じがしてしまう。私が見た加藤泰作品で、最も雑な作りの映画であり、この次は東映に戻って同じ安藤の主演で『懲役一八年』になってしまう。
唯一おかしかったのが、獄を抜け出した連中が慰安所に来て、秘密なので無音で酒盛りで騒ぐところだった。
最後、逃亡しようとする佐々木孝丸に復讐するため、安藤は得意の窓枠破りで、部屋に飛び込んできて、佐々木をハチの巣にしてしまう。
安藤昇は、芝居は下手だが、非常に迫力があり、男が男に惚れるという人間であることがよくわかる。
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