小津安二郎と黒澤明と言えば、世界的な大監督だが、同時に研究会が組織されている映画監督でもある。
この二人について、独自の評論を書いたのは、実は佐藤忠男さん、蓮実重彦先生と、この私だけである。他にもいろいろと書いた連中はいるが、大体が関係者の証言、雑誌等の記事などで、二人の作品についての批評ではない。
私も昨年、『小津安二郎の悔恨』を書いたので全国小津安二郎ネットワークに入会し、28年度の総会が開会されたので、江東区古石場文化センターに行く。
結構遠いところなので、横浜からりんかい線、京葉線をへて越中島から歩く。
来て気が付いたが、この辺は私の父が東京都の校長になり、最初に赴任したところなのだ、
平久小学校で、当時は朝鮮人の多いところだったそうだ。
まずは、東北大の五十嵐太郎先生の「建築から見た小津安二郎」 こういう表現の仕方もあるのかと思うが、特に目新しいところはない。ただ、小津の映画で主人公の家の全体像が不明というのは面白い。要は、丁寧に作られているが、彼の作品はリアリズムではないということだ。
戦後の多くの作品で、一家の家の平面図がきちんと作成されていたことに驚く。
総会では、新会長に北海道武蔵野女子短大の中沢先生が就任された。
その他、昨年にできたHPを活用することも了承された。
ミニ・トークは田中康義監督と設楽幸嗣で、田中監督は小津作品は3本のみだが、木下組の吉田喜重、渋谷実組の高橋治が、それぞれ小津について本を書いていて、小津組の助監督からはいないことが興味深いとのこと。
懇親会で新会員として紹介された。
「小津は亡くなって50年以上、黒澤はまだ20年なのに、小津の研究会は存続し、黒澤研究会は会員減少気味」についても話す。
要は、皮肉にも小津は60歳で亡くなられたので、最後まで駄作がなかった。
対して、黒澤は『影武者』以後、かなりひどい作品もあったので、40歳以下は、
「黒澤って少しも面白くないじゃないか」としか思っていないことがあると思う。
これは、4年前に『黒澤明の十字架』を出した時に感じたことである。