昔から、興業の世界では「2,8」と言って共に客が入らない月だが、それは昔は暖冷房がなかったためで、2月は寒く、8月は暑くてお客さんが来なかったのである。
2月から3本、それも全く傾向の違う芝居を見た。普通はないことだろうが、私はいつものことである。
まず、流山児祥プロデュースの『キネマと怪人』 キネマとは満映のことで、怪人とは怪人20面相で、小林少年も出てくる、黒テントの佐藤信の昔の劇である。
次は、民芸だが、珍しやウルトラマンの作者金城哲夫伝の『光の国から僕らのために』
そして、今日見てきたのが宝塚歌劇団宙組公演の『シエークスピア』と『ホット・アイズ』である。ホット・アイズってどういう意味だろうか。英語のホットには好色なという意味もあるから、いやらしい目つきだろうか。
流山児祥プロデュースの『キネマと怪人』は、佐藤信の「喜劇昭和の世界」の2作目で、私は1978年5月に下北沢で見ているが、多分今の本多劇場がある場所だと思う。
その前に『キネマと探偵』や『阿部定の犬』があり、これは1975年に2回あり、三鷹の空き地や有明3丁目で行われたとノートにはある。
これらは、非常に面白かったのだが、同時に異常に長い芝居で、どちらも夜の11時過ぎにやっと終わったと思う。
この劇の趣旨は二つあり、永遠に終わらないかに見えた昭和を、天皇の死によって無理やり終わらせることであり、また阿部定に象徴される昭和の庶民をそこに重ねるということであった。
それは、この2作では非常に上手くできたと思うが、3作目の『ブランキ殺し・上海の春』になると、佐藤信の創作能力が枯渇したのか、驚くほどつまらない劇だった。
今回は、「新進演劇人育成公演」とのことで、大幅に劇が短縮されていたが、十分に退屈できた。
やはり役者のレベルの違いというべきだろうか。
民芸の『光の国から僕らのために』は、作は青森で独自の創作活動をしている畑澤聖悟、演出は丹野郁弓で、出来はそう悪くはないが、どこか焦点の定まらない芝居だった。
その理由は、円谷プロで、「ウルトラマン」のメインライターとして大成功した金城哲夫がなぜ、沖縄に戻り、さらに海洋博でのトラブル等から酒びたりになって、自宅の窓に入ろうとして墜落ししたのかの原因を少しも解明していないからである。
後ろの席の叔父さんは言った、
「筋がよくわからない劇だな」と。
沖縄と特撮で、題材は非常に面白いので、再度脚本を書き直して再演してほしい芝居である。
さて、最後は宝塚歌劇団宙組の『シエークスピア』と『ホット・アイズ』である。
1970年代から宝塚は見ているが、宙組は初めてで、他に比べて地味と言われる宙組だが、今回はそれにあった比較的リアルで自然な芝居の『シエークスピア』は非常に良かったと思う。
作・演出の生田大和は、宝塚の現在のエース・小池修一郎に次ぐ才能を見せたと思う。
『ホット・アイズ』は、藤井大介のいつものラテン、トロピカル路線で、衣装のセンスがひどいと思うが、このダサいパワーも宝塚であると言えば、そうも言える。
ただ、どちらも音楽はなかなか良いと思えた。