新藤兼人監督の『ある映画監督の生涯』は、多分テレビで見たはずで、それを岩波新書にしたものも、先に読んでいると思う。
この新書版は大変に評判が悪く、溝口健二の周辺にいた人からは、
「新藤説は異常で、あれではまるで溝口は狂人のように見えるが、彼は人情に篤い人だった」という批判があった。
確かにその通りだと思うが、今回改めて映画版で見てみると、溝口健二は結構普通の監督のように描かれている。
新書では、新藤兼人の好きなように溝口のことを書いたが、映画では多数の関係者の証言によって中和されているということだろう。
多くの人が亡くなられていて、現在もご健在なのは、監督では成澤昌成くらいだろう。
私は、黒澤明(『黒澤明の十字架』)、小津安二郎(『小津安二郎の悔恨』)の2冊を出したが、実は一番好きな映画監督は、実は溝口健二なのである。
いずれ溝口健二についても何かを書こうと思っているが、まだその時期ではないと思っている。
それにしても、評論家の津村秀夫は、ひどいことを書く評論家だったが、その傲慢な態度はすごくて、今の評論家にはないものだと思った。
シネマヴェーラ渋谷