日曜日は、ラピュタで2本のリアリズムの刑事ものを見た。1965年日活の『七人の刑事・終着駅の女』と1962年松竹の『東京湾』
『東京湾』は、野村芳太郎監督で、東京下町の京成立石や西新井橋あたりを舞台にした作品で、昔から評価が高く、私はずいぶん昔に川崎国際で見たのだが、フィルムの状態が悪くてよくわからなかったので、再度見ることにした。今回は非常にきれいなフィルムで大変満足した。
脚本は松山善三と多賀祥介となっているが、後にATGに関係する多賀だが、この頃は松山の家に寄食していたのだそうだ。
銀座で浜村純が、ライフルで殺され、刑事たちが捜査すると、殺されたのは厚生省の麻薬捜査官であることが分かる。
そこから刑事の西村晃が、戦友で荒川放水路で貸しボート屋をやっていて、麻薬運搬のルートを勤めていた玉川伊佐男と対決し、最後は手錠で繋がれていたため共に鉄橋から落ちて死ぬ。
西村とコンビを組む若い刑事は石崎二郎で、佐分利信の息子だったが、これくらいしか出なかった。いくら父が名優と言っても子供も名優というわけではない。
犯人と刑事が同じ戦友というのは、ある意味で黒澤明の『野良犬』と同じ設定であり、まだ戦争が残っていた時代であることを強く感じる。
オールロケの撮影が非常に良いが、企画が佐田啓二というのが注目される。
ヌーベルバークがいなくなり、佐田はいろいろと彼なりに新しいことへ挑戦していた。渋谷実監督の『甘い汗』での悪役もそうで、もし彼は事故で死ななければ、監督やプロデューサーになれたと思う。
同様に、大映の市川雷蔵もそうで、彼は加藤道夫の『なよたけ』を映画化したかったというのだから、これも残念なことだった。
『七人の刑事・終着駅の女』は、どこの記録にもない作品で、家に戻って調べると、『八月の濡れた砂』と『不良少女・魔子』の後、9月に日活がお蔵入り作品から公開したものだった。
舞台は上野駅で、駅構内、台東署、飴や横丁、上野駅の地下道、食堂などが頻繁に出てくる。刑事は、テレビと同じ係長堀雄二以下の7人のメンバーである。
撮影はこれもオールロケで、台詞は後で付けたもののようだ。撮影は、監督の若杉光夫とコンビの井上完で、記録映画のようなタッチに非常なリアティがある。
また、録音は安恵重遠(藤原釜足の弟で東宝ストの馘首組)、監督補は宮川考司と独立プロの連中である。上野駅のホームで女を殺した犯人は、やくざのチンピラの杉山元で、吉田毅の顔も見える。
やくざの親分が宮坂将嘉の他、幹部が梅野泰靖、刑事に芦田伸介と大滝秀治、さらに庄司永健や草薙幸二郎と、劇団民芸映画である。
殺された女の同僚で、旅館の女中が笹森礼子で、この公開時にはもう女優を辞めていたはずで、彼女の最後の映画だと思う。
ともかく、この1960年代前半は、日本映画史で見れば、一番リアイズム的表現が頂点に達した時であった。