昨日の深夜に電話が来たので、なにかと思うと、通信社にいた後輩からで、
「原節子が死んだよ」で、「一面に出るだろう」とのことだった。
今度出した本が予期していたみたいに見られるのは困るが、もう90代だったので、いずれ来ることだったが。
さて、原節子だが、今回出した『小津安二郎の悔恨』で、一番反響があったのは、
「『東京物語』の原節子が演じた紀子という次男の未亡人には、今付き合っている男がいるはずだろう」と書いたところだった。
よく考えれば、当たり前のことで、戦争で夫が亡くなった妻は、ほんとんどが再婚したもので、その多くは元夫の兄弟、あるいは従弟などの親戚だった。
昔は、女性の多くが働いていなかったので、余程資産がある場合を除き、再婚しないと生活できないためで、また家の財産の維持継承の問題もあった。
私が最初に入った職場の庶務課長もそうで、二言目には「俺なんか兄貴のお古だ」と言い、実のお兄さんが戦死したので、その奥さんと結婚したとのことだった。
小津安二郎の『東京物語』で言えば、三男大坂志郎と再婚するところだが、小津は大坂が好きではなかったので、その筋にはしなかったのだろうと思う。
大坂志郎は、国鉄職員で大阪にいて、原節子は東京で働いているという設定にして再婚させていない。
必ず言われる彼女の42歳での引退の原因だが、やはり義兄の熊谷久虎とのことだろうが、不愉快なので詳細は書かない。熊谷は1986年まで生きていたとのことで、本当に彼女は大変だったと思う。
日本映画史に残る大女優のご冥福をお祈りする。