台風は、まだ来そうもないので、黄金町に行き、沢田研二映画祭を見に行く。
今回上映されるのは、全部見ているのだが、途中で山口敏太郎という人がトークショーをするというので、行くことにした。
この人は、今回初めて知ったが、オカルト研究家・作家だそうで、オカルトと沢田研二という取合せの奇妙さに興味を引かれたのである。
果たしてこの天気で人が来るのかと思うが、ファンらしき女性たちも含め、数十人の観客。
まずは、『ザ・タイガース 世界はボクらを待っている』
数年前にフィルムセンターで見たことがあり、脚本田波靖雄、監督和田嘉訓で、そのチープさに呆れたが、今回見て意外にもきちんと作っていると思った。
和田嘉訓は、1960年代は「東宝の俊英」と言われ、かなり期待された若手監督で、デビュー作『自動車泥棒』は、予告編もよく上映されていた。
だが、数年前にラピュタで見たが、非常にできの悪い作品で、このために和田監督は3年間干される。
その後ドリターズやタイガースの映画を作るようになったが、それも止め、ソニーに入り取締役まで務めて定年退職し、すでに亡くなられているそうだ。
話は、アンドロメダからシルビー姫が、宇宙船の事故で地球に来る。 星人が、姫の他に天本英正と浦島千加子だけというのが泣かせる。
シルビーは、久美かおりで、ジュリーの恋人として宣伝された女性歌手だが、確かにお姫様的なルックスである。
その他、タイガースのファン、追っかけとして、小橋玲子、松本めぐみなどが出てきて、東宝の若手女優であるが、今残っているのは誰もいない。
刑事として小沢昭一が出てくるが、タイガースの歌を浪花節で唸るのが笑わせてくれる。
その他、なべおさみや小松政男らのナベプロタレントの他、天本や浦島の他、加藤春哉などの東宝の専属俳優も出ていて、
「この時期、東宝も大変だったのだな」と思う。 助監督は、成瀬巳喜男作品の石田勝心で、思わず「ご苦労さま」と言いたくなる。
トークショーは、オカルトとはまったく関係なく、山口先生が、いかにジュリーファンであったかの信仰告白だった。
中学生の頃、ジュリーファンの山口少年に、母親は「お前は男が好きなのかい」と聞かれたことがあるそうだ。
世の中には本当に様々な人がいるものだと思う。
2本目は、1981年の『魔界転生』で、実はこの映画は、封切り時に見ていて、なんと知人の紹介の「お見合い」の場として見たのである。
なぜ、この映画を選んだのかは、思い出せないが、適当な作品がなくて選んだのだろうが、渋谷の今はホテルになっている渋谷全線座の2階席だった。
このメチャクチャ映画を見て、どういう話をして半日を過ごしたか、大変申し訳ないが、相手の女性のことも含めてまったく憶えていない。
だから、今回が初めてみたいなものだが、実に飛躍した話というか、デタラメ映画で、勿論山田風太郎の発想が凄く、付いて行くことが大変である。
深作欣二は、そうしたでたらめさを嬉々として楽しんでいるように見える。
さすがに当時大ヒットの角川春樹のお力、出演者は、沢田研二の他、千葉真一、若山富三郎、丹波哲郎、緒形拳、松橋登、佳那晃子の豪華版。
中では、緒形拳の宮本武蔵が異様なメークで笑ってしまうが、丹波哲郎の刀鍛冶の村正も、異常にまじめに演じていて大変におかしい。
音楽は、尺八の山本邦山だが、あまり大したものではないだろう。
この2本を見て、改めて思うのは、沢田研二は、ジュリーという役柄を演じていたのではないかということだ。
どこかで聞いたが、沢田も、タイガースのメンバーも、グループサウンズのような音楽は実はどうでもよくて、本当はザ・ローリングストーンズのような本物のロックが好きだったが、仕事は仕事として、きちんとGSをやっていたとういうのだ。
沢田研二は、なかなか大したものだったのである。
さて、そのお見合いのことだが、勿論破談になった。
黄金町シネマジャック&ベティ