1959年、菊村到の原作を日活で映画化したもの、脚本は八住利雄で監督は宇野重吉である。
新聞記者の小高雄二は、居酒屋で飲んだくれている男に会い、記者と分かり絡まれて往生するが、翌日その男は、きちんとした態度で社に来る。
男は、大坂志郎で、硫黄島の生き残りで、悲惨な戦場のことを語る。そして、自分は硫黄島に埋めてある日記のノートを掘り返しに行くと言う。
彼の言葉の真柏性に押されて小高は、それを記事にする。そして、大坂は、戦場で救助してくれた親切な米国軍人の手引きで硫黄島に行けると言ってくる。
そして、暫くすると大坂の硫黄島での死が伝えられる。彼は岩場から落ちてしんで、自殺を思わせたという。
小高は、大坂と共に洞窟で生きのび、帰還できた戦友の佐野淺夫に会うと、「日記なんて知らない」という。
大坂には、彼が面倒を良く見ている若い女性がいて、それは看護婦の芦川いづみ。
だが、大坂は、芦川が恋心を示した時、急にはなれて行ったという。
そして小高は、芦川が、硫黄島で、大坂と佐野のところに転がり込んで来た傷病兵の山内明の妹であることを知る。
最後、佐野は、大坂が島の洞窟の中で、多分山内を絞殺しただろうことを示唆する。「いずれ時間の問題で死ぬ運命だったのだから、俺だったやったさ」と佐野は、大坂を擁護する。
そして、その罪滅ぼしのように、山内の妹の芦川の面倒を見たが、結婚はできず、ついに贖罪として硫黄島で自殺したのである。
言ってみれば、個人レベルの戦争責任を取ったということで、この映画が作られた1959年頃までは、日本人の中には、個人レベルでも戦争の責任を取りたいという意識があったことが良くわかる。
チーフ助監督が、後にロマンポルノ時代に「女の四畳半シリーズ」等の名作を作った武田一成とは驚いた。
川崎市民ミュージアム