女優の三条美紀が亡くなられた、86歳。
彼女は戦後大映の新人女優としてデビューし、三益愛子と共演した「母物」で人気女優になる。
だが、彼女の出演作品で重要なのは、黒澤明の問題作の『静かなる決闘』に主人公として出ていることである。
これについては、黒澤明の徴兵されなかったことの「贖罪意識」だと言うのは、何度も書いたので繰り返さないが、三船敏郎の相手役となった彼女も戦争の被害者だったのである。
母物といい、『静かなる決闘』といい、彼女は戦争の被害者役を演じてきたと言えるだろう。
1970年代以降は、市川崑監督の『犬神家の一族』以降の横溝正史シリーズ作品でも必ず出ていた。また、市川崑の晩年の傑作『細雪』では、槙岡本家の女中役も演じていた。
言うまでもなく、かつて若手女優として活躍されていた紀比呂子は、彼女の娘だった。
戦後の映画を代表する女優のご冥福をお祈りする。
それにしても、愛川欣也の訃報は新聞の一面トップと言うのは、少し扱いが大きすぎるように思うが。