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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『わが恋の旅路』

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1961年、篠田正浩監督の松竹大船作品。これを見るのは多分3回目で、最初は池袋の文芸坐で、2回目は横浜のシネマジャックで、今回が3回目である。
東京で、富豪の夫人月丘夢二の庇護を受けて怠惰な生活をおくっていた川津祐介は、横浜の新聞社の記者になる。
川津祐介は、大島渚の『青春残酷物語』でも、家庭教師の家の奥さんのツバメだったが、この時の女優は氏家慎子である。
氏家慎子は、劇団青年座の女優だったが、その名で分かるとおり、読売新聞の社長だった氏家斉一郎の妻である。

川津は、喫茶店でウエイトレスの岩下志麻と会い、一目ぼれする。

彼女は、弘明寺近くに住んでいて、父親の三井弘治は、捺染工場の職人だったが、怠け者で競輪場にばかり行っている。
木造の大きな捺染工場が出てくるのは非常に貴重な映像だと思う。
彼女には、大きな商社社長山村聰の息子渡辺文雄が言い寄っていて、三井弘治が競輪場で怪我をして長期入院し治療費の世話を受けたことから,仕方なく渡辺の家に入る。だが、正式な結婚ではなく、籍は入れてくれない。
だが、山村らは、「カフェーの女給上がり」の岩下を蔑み、
「奥さんはお茶を出すのだけは上手い」と女中にまで言われる始末。
そして、買い物中に交通事故に遭い、記憶喪失になってしまう。
この事故に遭う場所は、中区港町の、横浜市役所付近で、まだ運河の上に港橋が架かっている。

記憶喪失になってから、アミタールによる療法が施されるが、なかなか記憶は回復せず、岩下は自殺をくわだてて未遂になる。
最後は、もちろん記憶が戻り、想い出の山手の外人の住居宅の広い庭で、岩下と川津が抱き合ってエンドマーク。

ただのメロドラマと言えばそれまでだが、全体を貫く抒情性は素晴らしいと思う。
さらに、大岡川沿いを走る横浜の市電、大岡川を浚渫している船の向こうを走る京浜急行など貴重な映像が見られる。
衛星劇場

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