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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『その人は女教師』 

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映画は、見てみないと分からないものだと思う。

宮内富貴子脚本なので、だが映画『俺たちの荒野』以外、ろくなものがない出目昌伸監督なので、期待せずに行ったが、大変に良かった。

                

1968年10月21日、新宿は大騒乱で、一人列を離れてさまよっていた高校生に三船志郎は、偶然に出会った岩下志麻のOLのような女に抱擁・キスされて、機動隊の追及から逃れた。

そして、三船の三島市の高校の数学の新任教師として岩下がやってくる。

これは、校長の案ではなく、生活指導の戸浦六広のアイディアで、学生時代に運動をしていた岩下なら、学生に上手く対応できるだろう、「毒には毒を持って制す」だった。

三船の家は、地元の有名医師神田隆と一の宮敦子の夫婦、高校のクラスには、美少女の髙林由紀子、日活の不良の中沢治巳らがいて、高林と三船は一番親密で、彼らは常に学校と対立している。

岩下とのキッスが忘れられない三船は、岩下の上京にも付いていく。東京で保健婦をやっている母の北城真紀子と会うためで、北城は、いずれ三宅島に行くという。日活には、保健婦映画があり、芦川いづみや樫山文枝らが演じた。

まるでストーカーだが、岩下も三船が好きになり、仲間と借りている別荘で数日をすごし、もちろん性交にまで行くが、岩下のベッドシーンは吹き替えだろう。

そして、三船は、「いずれ20歳になったら結婚しよう」と宣言し、岩下も同意する。

家から出た三船は行方不明となり、学校にも来なくなり、騒動になる。

すると、神田と懇意の警察署長の清水元が、「岩下の三船への未成年者誘拐で告訴すれば良い」と神田に助言し、岩下は逮捕されてしまう。

取り調べで岩下は言う、「教師と生徒の問題で、男性教師と少女なら、いくらでもあり、問題にしないが、私が女で、生徒が男だから問題にされ、これは差別だ」と言う。

日本でも映画『若い人』から『エデンの海』に至るまで、先生と生徒の恋はいくらでもあるが、すべて男性教師と女生徒との恋だった。

ある日、岩下は、突然釈放される。三船が自殺したからだ。

三船の葬式に岩下が行くと、一の宮は言う、「息子を殺したあんたに焼香はしてもらいたくない」

その時、列席していた高林が出て来て、岩下の横に立ち、他の生徒も、受付の親戚との間に立つ。

大変に感動的なラストだった。

いつもは『陸軍中野学校』で、重い響きの池野成の音楽が、武満徹のようにメロデイアスで泣かせた。

この映画の良さのほとんどは、脚本の宮内のものだと思えた。元は、当時フランスに起きた実話だそうだが、そこでは女性が自殺したのだが、宮内は関係を逆にして成功した。

国立映画アーカイブ

 


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