午後、初詣に近所のお三の宮に行くと、50人くらいの列で、とうてい私には無理なので、裏の堰神社にお参りする。その名の通り、ここは横浜の埋立の始まりなのだ。
さて、夕方戻ってテレビを見ると、能登の地震ばかりで、詰まらないのでユーチューブを入れると日活の予告編があり、『紅の流れ星』をやっているので、ビデオを見るが、やはり面白く渡哲也としては、最高の1本ではないかと思う。
『紅の流れ星』は、よく知られているように舛田利雄自身の監督作品、石原裕次郎主演の『赤い波止場』のリメークであり、神戸を舞台にしている。だが、日活も後期で、予算が不足していたのだろう、本当に神戸に行ったと思われるのは、主演の渡哲也、浅丘ルリ子、松尾嘉代、榎木兵衛ら数人であり、杉良太郎以下のチンピラは、横浜ロケで済ましている。 ここは、完全に横浜港のはしけだまりである。 ノートを見ると、この映画は1967年10月に新宿国際で、鍛冶昇の『東京ナイト』、江崎実生の『マカオの竜』との3本立てで見ている。『紅の流れ星』で、ともかく驚いたのが、木村威夫の美術のセンスと、全体に漂うクールな感じだった。ここでは、当時流行していたジェンカが出てくるが、ディスコでのアクション・シーンが終わった後に、渡がその場を鎮めるように踊りだすと言うもので、実に自然でカッコ良かった。先日見た、『君が青春のとき』のラスト・シーンでの芸のなさとは大違いだった。その音楽もブラスが強調されていて、歌声的には聞こえない。池上金男の台詞が大変洒落ていて、随分遊んでいる感じだったが、今見ても相当にキザ。浅丘の婚約者で、実は暴力団の密輸品の宝石を手を出していたインチキ男が山田真二、杉良太郎の恋人に奥村チヨと配役も斬新だった。中盤での渡哲也を、東京から殺しに来た宍戸錠と渡との格闘シーンもさすがに迫力がある。宍戸もまだ若かったのだ、今では到底できないアクションである。鏑木創の音楽が実にクールで映像にぴったりしている。冒頭で、今はなき横浜の新港埠頭を走っていた貨物線や鉄の屋根の付いた荷捌き場が出てくるのが、今では大変に貴重な映像である。 今日見て、渡が浅丘を連れて、神戸の福原に行き、娼婦の石井富子と話すシーンがあるが、ここも横浜南区の真金町ではないかと思えてきたが、どうだろうか。 全体としてみれば、横浜で撮影を始めて、次第に調子が出て来たところで、渡哲也や浅丘ルリ子、藤竜也、松尾嘉代、山田真二らを連れて行って神戸市内で後半を撮ったという感じだろうか。 この年に私が自分で作った1967年の日本映画ベストテンは、約100本見た内で以下のとおりである 1 『拳銃は俺のパスポート』 監督野村孝 主演宍戸錠 2 『殺しの烙印』 監督鈴木清順 主演宍戸錠 3 『懲役18年』 監督加藤泰 主演安藤昇 4 『ある殺し屋』 監督森一生 主演市川雷蔵 5 『日本春歌考』 監督大島渚 主演荒木一郎 6 『紅の流れ星』 監督舛田利雄 主演渡哲也 7 『日本暴行暗黒史・異常者の血』 監督若松孝二 主演野上正義 8 『痴人の愛』 監督増村保造 主演安田道代 9 『波止場の鷹』 監督江崎実生 主演石原裕次郎 10 『対決』 監督舛田利雄 主演小林旭 次点 『網走番外地・悪への挑戦』 監督石井輝男 主演高倉健 さて、キネマ旬報のベストテンは、 1『上意討ち』 2『人間蒸発』 3『日本のいちばん長い日』 4『乱れ雲』 5『華岡青洲の妻』 6『智恵子抄』 7『愛の渇き』 8『あかね雲』 9『なつかしき笛と太鼓』 10『忍者武芸帳』 今村昇平の『人間蒸発』は、面白いとは思ったが、その方法にやや疑問を感じたのだ。