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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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市長決済

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横浜市役所に長年いて、市長決済の文書を担当したのは、2回だけだと思う。

一つは、新杉田で、西武鉄道が持っていた用地を、357号線等の用地とするために約60憶円で買収した時だった。これは、横浜市がもともと持っていた埋立権を200万円で、桑島建設の関連団体に売ったものを取り戻したという、バカバカしい事案だった。

もう一つも、これまた国道357号線関連の事案で、大黒ふ頭、本牧ふ頭の首都高への土地の売却の問題だった。

これについては、横浜市港湾局管財第一係長の、私の前任者の小山政雄さんが、周囲の無理解にもかかわらず大変に頑張っていて、首都高に対して有償で売ることで数年間交渉していたのだった。

対して、首都高と横浜市道路局の伊藤課長や、後に開国博の本部長にされて、中田宏市長のあまりのひどさに苦悩して若死にしてしまった川口おぼっちゃま君などは、「ただで売れ」という立場だった。

ただ、これには大問題があり、地方財政再建措置法というのがあり、「国は地方に財政で無用な負担をさせてはならない」が定められいたからだ。実際に、市会では社会党の議員からの質問もあったのだ。

この間の議論の間には、建設省のバカで生意気な係長に呼び出されたなんてこともあった。

これも実に、不愉快な事件で、ある日突然、三ッ沢にある建設省国道事務所に来いとの電話があった。

私は、担当の佐竹君と一緒に三ッ沢の事務所に行った。

インターの裏の方にあった小さな事務所だった。

行くと、「俺は建設省のエリートだ」という顔をした痩せて貧相な男がいて、

いきなり「横浜市は、首都高と357号線の用地を全部タダでよこすのが当然だ」と言った。

私は、「地財法の定めがあるのでできません・・・」と静かに答えてあげた。

こいつは、完全に知財法など、知らないと思い、持参した六法を見せた。

すると何も言わずに、「帰れ・・・」だった。

実は、この時ほど興奮したことはなく、以来私の高血圧は大変にひどくなった。

佐竹君も「指田さんが、あんなに怒ったのははじめ見ました」と言った。

多聞、血圧は200を越えていただろうと思う。

そして、1986年12月の中旬、いきなり首都高が来て、「大黒、本牧の土地は全部有償で買います」と言ってきた。

事情を聞くと、首都高は当然予算主義で、毎年東京、横浜で用地買収費を予算化している。その元は、財政投融資だそうだが。

その年も、何十億か予算化されいた。

ところが、その主なものだった東京の王子線がだめなので、大黒、本牧で予算消化するしかないので、「横浜市の言い分で買います」と頭を下げてきたのだ。

ただし、大黒ふ頭については、国への埋立申請のとき、その付帯条件に「将来、国道ができる時は、その権原は国に帰属する」となっていたので、大黒、本牧とも国道357号線と首都高が重なる部分については、無償で帰属させた。

                  

しかし、大黒については、巨大なインターチェンジがあり(目玉とよんでいた)、相当部分がはみ出るので、それは有償とした。また、本牧はその大部分は、横浜港ふ頭公団の土地で、港湾局は住友倉庫に隣接するほんの少しで、公団は、「全部横浜市にお任せします」とのことだった。

急遽、佐竹君に起案文書を作ってもらったが、なんと土地の図面のない用地売買だった。

本牧はともかく、大黒は、大きな目玉があり、それも順に降りているので、地上権の算定が非常に面倒なのだ。

今なら、PCですぐにできるのかもしれないが、当時は手作業でやることにし、それは後日付けることで、市長決済を廻すことになった。

港湾局は無事出たが、道路局を経て、当時の助役だった池澤利明さんで止まった。

彼曰く「横浜市は、道路を作ってもらうのだからタダで上げるのが当然だ」ったが、後にNHkの『プロジェクトX』では、なにも触れていなかったのには、池澤さんもNHKもいい加減だなあと思った。

逆に「もっと高く売れ」と言ったのが、財政局の原克己部長で、この人は昔は、港湾局にいたこともあり、事情に詳しいので苦労したが、なんとか判を押してくれた。

その後は、市長だが、これは市長室の秘書にあずけて、やっと終わった。

全100憶円の内、当年度分で25億円だった。

と思ったら、今度は、財政局の予算担当から電話があった。

「この12月という、年末に25億円もの、収入の増化があるのは困る」というのだ。

「国からの地方交付税が大体きまっているのに、ここで25億も歳入がいきなり増えては困る」という理屈だった。

「もう市長決済が降りていますから」と無視した。

その翌年、私は港湾局から都市計画局に異動したが、全部で100憶円くらいは、私も横浜市の財政に寄与したはずである。

 


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