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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『波』

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1952年の松竹映画、原作は山本有三で、脚本・監督は中村登、主演は佐分利信と淡島千影。


篠田正浩によれば、この時期の松竹のイデオローグは山本有三だったという。
確かに松竹の城戸四郎はフェビアンニストで、山本は参議院にかつてあった緑風会だったのだから、思想的には一致していただろう。

下町の深川の小学校教師の佐分利信は、堅物だが真面目で、最貧困家庭の子桂木洋子の境遇を心配していたが、予想通り飲んだくれの父親の坂本武士は、信州の芸者に売り飛ばしてしまう。
数年後、佐分利の下宿に桂木が来て、お座敷から逃げて来たと言い、その夜佐分利と結ばれてしまう。

1年後、桂木が突然に姿を消し、ある男の叔父だという北竜二が来て、自分の甥が桂木と伊香保温泉に行ったという。
伊香保に行った佐分利は、若い医学生の岩井半四郎と一緒にいた桂木を引きずるようにして引き裂き、東京に連れて戻る。
そして、桂木は妊娠して子を産むが、産褥で死んでしまう。
桂木は言う「バチに当たったんだわ」

佐分利は、男の子を、笠智衆の斡旋で若くてきれいな未亡人淡島千影に預けて育ててもらう。
淡島の家は、湘南あたりだが、ある時佐分利が来ると、そこに若い男が産着等を持ってきたことを知る。
「もしかすると、子どもは佐分利のではなく、岩井のではないか」との疑問を持つ。
今ならDNA鑑定ですぐわかるところだが、ないので戦後まで、佐分利は、この疑問に悩まされることになる。



息子は、小学生の設楽幸嗣から高校生の石浜朗になり、女学生にラブレターを出したり、年上女性と付き合ったりする。
難しい年頃だと言うが、この後すぐに太陽族の時代になるのだから、時代の変化はすぐそこまで来ていたのである。
最後、淡島は理由は不明だが、スエーデンに行くことになる。
神戸へと向かう急行で別れるとき、佐分利は言う。
「日本に戻ってきたら僕と結婚してくれますか」

この一言を言うのに、昭和初期から20年代の後半まで20年以上経過したのだ。
昔の日本の男は奥ゆかしいというか、女を口説く術を知らなかったというべきか。
衛星劇場

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