桜の開花が過ぎると、花粉症の季節になり、その方たちは大変だと思う。私も、朝起きて、エアコンをつけて外気を入れると、目が痛くなり、「ああ花粉か」と思うが、花粉症ではない。
さて、1973年4月公開の松竹映画『同棲時代』の真ん中あたりで、由美かおるの田舎の友達が上京して来る。岩崎和子という女優で、あまり見たことがないが、彼女は「今度結婚することになったので、その前に東京を見たい」と来たのだと言う。だが、実はそれは嘘で、仲雅美に「私は結婚できない体です」と言う。
これはなんだと一瞬驚くが、理由は、「花粉病で、春花が咲くとアレルギーがひどくなるので、結婚できないのだ」という。初め部屋に来たとき、由美かおるに「お土産」と言ってビニールの小さな造花を出す。それをコップの水に入れると花が咲いたようになる玩具である。つまり、彼女は生きた花はアレルギーになるので観賞できず、花粉を出さない造花しか愛でることができず、冬が好きで、花が咲く春は嫌いだと言う。1973年の時点で、花粉病(今の花粉症のことだと思うが)、この病気が出てくるのは極めて珍しく大変早いと思う。作者たちの周辺に、この病状を持った人がいたのだろうか。
今どき、花粉症だからと言って結婚できないと絶望する女性はいないだろう。
そのくらいは社会も進歩したというべきだろうか。