1972年に公開されていたことは知っていたが、見るのは初めての作品。
原作は梵天太郎のヒット劇画で、脚本新藤兼人、監督中平康で、照明も岡本健一と一流だが、到底彼らの映画とは思えないでき。
朝鮮戦争中に米兵に強姦されてできた混血児リカが、横浜で暴力団等と戦う話で、当時東映や日活でも盛んに作られていた「スケバン」もののに近い。
主人公リカの青木リカがすごく、体は大きいいが、台詞のぶっきらぼうさには驚くように、全体が極めて粗雑なのだ。
写真のようにパンチラと言うよりもモロ見えやホットパンツ姿でのアクションシーン、ナイフや拳銃でやたらに血が出るが、少しも面白くない。
多分、オールアフレコで、その手軽さは、当時のピンク映画のレベルで、すでに中平の後輩たちが始めていた日活ロマンポルノにはるかに及ばない。
リカの母親は、青年座の女優今井和子で、その他森塚敏、東恵美子、初井言榮などが出ていて、青年座と提携して近代映画協会が作ったもののようだ。
最後、悪辣な連中との戦いが終わったリカは、不良処女の更生施設で、彼女の憧れであった先生の教会での結婚式に殴り込み、お祝いに爆竹を破裂させてオートバイで去っていく。
この教会の外観は、山下町の海岸協会で、先生は、今や日本演劇界を代表する男優となった津嘉山正種さんである。
「リカ、どこへ行く、リカ頑張れ」とのタイトルで終わる。
この愚作に一つだけ意味があるとすれば、監督中平康の反米主義である。
そう考えると、日活での『狂った果実』も反米映画であり、中平のどこかには、戦後日本をおそったアメリカニズムへの反発がどこかにあったのかもしれない。
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