1974年4月公開の東宝・国際放映製作の作品、もちろん、かぐや姫の大ヒット曲の映画化。これについては、日活の岡田裕が興味深いことを本で書いている。かぐや姫の大ヒットで、岡田氏も映画化権を取りに行った。
すると、「あれは東宝に売ったのでだめだが、次の曲があるので」とのことで作られたのが『赤ちょうちん』だった。
これで、『妹』『バージン・ブルース』の、藤田敏八監督・秋吉久美子主演の傑作が生まれることになる。
ちなみに、この3部作は、ポルノではなく、一般映画だった。
さて、こちらは、関根恵子、草刈正雄主演のメジャー作品だったが、脚本が松浦健郎のところにいた中西隆三という年寄りだったので、ぜんぜん駄目だった。
まず、草刈が早稲田の人形劇サークルの部員というのが古い。この頃、学生が人形劇をやっていると言うのがよくあり、非常に白けたものだ。もっとも、村上春樹も、早稲田大学人形劇研究会にいて、9号館に入っていたとのこと。彼の初期の作品には、この9号館が封鎖解除される場面が出てきて驚いたものだ。
9号館は、主に早稲田の劇団が占拠していて、劇団演劇研究会や劇団自由舞台(今は、どこかのホールの偉い人になっている赤尾君なんてのがいた)が勝手に稽古場を作っていた。ここに慶応大から来ていたのが、つかこうへいである。
この愚作のなかでも、校舎の屋上で舞台用の道具等を作るシーンがあるが、ここは9号館の屋上のように見える。
話は、大学生の草刈が、竹藪で美しい娘の関根恵子に会い、そこからかぐや姫を想起して、劇を作り、貧乏な関根と同棲する。その中で、早稲田の裏の神田川を遡上して井の頭池に行くと言う挿話もある。
草刈作の『かぐや姫』では、「姫と若者は幸福に暮らす」となっていて、それで東北巡業公演に行く。
もちろん、二人の同棲は上手く行かず、妊娠した子を、草刈の兄の手配で下ろされ、関根は傷つき、二人は別れるだろうで終わる。
実は、この映画は、東宝系で公開されたが、実際は国際放映で作られたもので、草刈・関根の東宝の俳優以外、花房徹、伊藤比南子らのアングラ演劇の者、黒沢のり子のように後に日活ロマンポルノに出る者、勝部演之、賀原夏子、神山繁などの新劇役者等から出来ている。
要は、当時の東宝の俳優切り捨て作の一つだったわけだ。
この伊藤比南子さんには、私たちの2本の芝居に出てもらったことがあるので、当時聞いたことがある。
どういう経緯で、ここに出たかは、知らないが、監督の出目昌伸は、草刈と関根の二人以外はどうでも良く関心がなかったとのこと。
黒沢のり子は、もう一人の男のサークルのリーダーの所雅信というのと雪の中で心中するが、そのとき黒沢のり子の足先が少し見える。だが、これは黒沢の足が非常に汚いので、実は伊藤比南子さんの足先を撮ったとのことだ。
黒沢のり子は、増村保造のATG作の『音楽』でも主演した女優であり、前野聡一朗との結婚していたことのある女性だそうだ。
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