1954年の松竹での美空ひばりの主演映画、共演は当時人気だった石浜朗、監督は岩間鶴夫。
清水市の話で、ひばりと石浜の家は、牛乳屋をやっていて、父親は徳大寺伸である。
夏で、店には氷冷蔵庫しかなく、牛乳が腐ってしまう。電気冷蔵庫がなくて店をやるのはひどいと思うが。
町には、若者集まりがあり、若草会と称していて、町の浄化を目指している。
この民青のような雰囲気が不快だが、芦川いづみがいるので許せる。
そこに東京の大学に行っている山田真二が帰って来る。彼の家は裕福で、父の斎藤達郎は、海運会社をやっている。
徳大寺とも親友なので、彼は15万円を貸して電気冷蔵庫を買う手伝いをしてくれる。
その代わりに、山田真二とひばりを結婚することにしてくれと言うのだ。
実は、ひばりは、兄の石浜が好きなので、困惑するが、店のためと納得する。
だが、ひばりは、徳大寺の子ではなく、日中戦争後に町に倒れていた男の娘で、それを助けて育てて来たのだ。
歌舞伎では、愛し合う恋人同士が、実は兄妹で結ばれないというのがあるが、その逆である。
ひばりも、石浜も互いに好きなのである。
だが、山田真二は、二人の仲を邪推し、自暴自棄になり、町の不良と付き合うようになる。
それを心配して、石浜は、不良たちと戦い、その中で死んでしまう。
最後、ひばりは、石浜の名を叫んで終わる。
これを見て思うのは、古くささである。斎藤が洋楽が嫌いで、小唄、長唄等が趣味というのも変だ。
日本及び途上国では、どこでも上流は西欧音楽を好むものだからだ。天皇家も聞いていたのは、クラシックであり、邦楽ではなかったのだから。
これを見て、やはり川島雄三の新しさがよく分った。
彼には、意外にもひばり映画があり、『お嬢さん社長』で、結構面白かったからだ。
ここから、ひばりの「お嬢」というニックネームが出来たとされている。
やはり、監督の力量は恐ろしいものだと思った。