2007年にフィルムセンターの『歌謡映画特集』で上映された時、私は次のように書いた。
東宝と香港のキャセイ・オーガニゼーションの1961年の合作映画。
監督は東宝のベテラン千葉泰樹、脚本井出俊郎。
主演は宝田明と香港の美人女優尤敏(ユーミン)
彼女は、鈴木保奈美と安田成美を足して二で割った美人。
後に、歌手ユーミンが出たとき、あの美人女優と同じ名を名乗るとは良い度胸だと思ったが、ひどいブスだったのには驚いた。やけくそだったのだろうか。
話は通信社記者宝田が偶然寄った香港でユーミンと知合い、恋に落ちる。
女性画家司葉子が恋敵で、司の感情が大変きめ細かく描かれている。
ユーミンが実は日本人の母との間の子であり、戦後日本に帰国後、行方知れずになっている母親探しをするあたりから真面目な物語になる。
木暮三千代との再会には、やはり涙が出た。
最後、母を見て宝田との結婚を躊躇していたユーミンが決意したとき、宝田はラオス内戦の取材で死んでしまう。
その時の司の台詞
「この悲しみもいずれ時が解決してくれるでしょう」
それに対するユーミンの言葉
「あの人を愛したことは決して忘れません」
これは、すべてを水に流す日本といつまでも忘れない中国との意識の差である。
合作映画は安易な作品が多いが、きちんと作られた作品で大変感心した。
だが、この映画、歌はサンパンでユーミンが歌う『香港の夜』だけで、一体どこが「歌謡・ミュージカル特集映画」なのか。
非常に良く出来た合作映画だと思う。
日本と中国、ここでは香港だが、との映画というと、戦前の長谷川一夫と李香蘭の3部作がある。
だが、そこでは日本人の男は中国人女性から必ず惚れられる役だが、ここでは相思相愛というよりも、むしろ宝田、つまり日本の男が中国人の女性を追掛けるように変化している。
日本と中国の関係の変化の現れというべきだろうか。
ともかく宝田明が、ユーミンと司葉子の二人の美女に持てるのがおかしいといえばおかしいが、それがメロドラマであり、娯楽映画というものである。
十分に堪能したが、ユーミンは後に女優を辞め、華僑の実業家と結婚したが、早く亡くなられているようだ。
やはり美人薄命である。
日本映画専門チャンネル