1952年の豊田四郎監督作品、原作は永井龍太郎、主演は原節子と池部良、さらに池部の恋敵に山村聡である。 原は、一度結婚したが半年で別れて兄・龍岡晋と南美江の家にいて、渋谷の映画館の売店で働いている。映画館は実景のようで、道路の幅から見て、百軒店にあった東宝系のテアトル館のように思える。原の父の三津田健は、大学の化学の教授で、同じ列車にいた実業家の山村聡がトイレに財布を置き忘れた時、三津田を金を抜き取った犯人のように思い、それを書店主の浜田百合子に言い、浜田は友人の原に言う。この辺、大学教授は貧乏だという風潮が面白い。上野駅の階段で倒れた三津田は、弟子の池部良の家に来るが、池部は築地市場で魚介の仲買のバイトをやっている。池部と原は、三津田を介して幼なじみだったが、池部が優柔不断で、関係は進行していないままだった。山村が原節子に世話してくる仕事先が、ラジオ東京、今のTBSであることが面白い。松竹では、時代の新風俗を入れるのが鉄則だったからだ。そこに実業家で大金持ちの山村が、7年前に死んだ妻に、原が瓜二つと言うことで求婚してくる。山村は、趣味人らしく、邸宅には書画骨董が沢山ある。彼の友人は、御橋公や菅原通斉、十朱久雄らで、彼らの嫌らしさが強く描かれている。山村の求婚に、龍岡と南は大賛成。そして、ジャガイモ(馬鈴薯と言っている)の不凍化の研究のために池部は北海道に行き、山村の会社への就職を断る。山村の妻の7回忌の宴を手伝った後、原節子は、北海道に行く池部を追って駅に向かう。その時、山村は、自分の車を原に使わせる。この辺は、松竹のヒット作、『暖流』で、ブルジョワ娘の高峰三枝子が、医者の上原謙をめぐって看護婦の水戸光子とフェアーに付き合うことによく似ていると思う。「金持ちも、貧乏人も互いに和解しあって生きていこう」と言う、松竹、そして豊田四郎のイデオロギーである。なかなか面白い作品だった。日本映画専門チャンネル
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